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経理事務の生産性向上 第2回:RPA・ERP編

経理事務の生産性向上シリーズ第2回。RPAやERP導入による経理作業効率化の具体例と導入時の注意点を解説します。

経理事務の生産性向上 第2回:RPA・ERP編

前回は、経理担当者のデスクワークにおける生産性向上策として、エクセル関数やVBA、バッチファイル、SaaSについて解説しました。今回は、さらに進んだ自動化ツールであるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と、企業全体のデータ管理・分析を支えるERP(統合基幹業務システム)を中心に解説します。


RPAによる経理作業の自動化

RPAとは、PC上で人が行う操作を自動化するツールです。具体的には、次のような作業を自動化できます。

  • Webブラウザ上のデータ取得・入力
  • 複数Excelファイルの統合・集計
  • 定期的な帳票作成とメール送信
  • 会計ソフトへのデータ転記

RPA導入のメリット

  1. 手作業ミスの削減
    単純作業を自動化することで、入力ミスやコピー漏れを防止できます。

  2. 定型作業の工数削減
    月次の経費精算や請求書処理など、毎月同じ作業を短時間で終わらせられます。

  3. 属人化の解消
    個人に依存していた作業をRPAで標準化し、誰でも同じ結果が得られる状態を作れます。

RPA導入の注意点

ただし、RPA導入は万能ではありません。以下の点に注意が必要です。

  • ツール選定の難しさ
    機能・料金・保守性に差が大きく、適切なツールを選ぶだけでも労力がかかります。

  • 設定・保守の難易度
    操作手順やエラー処理を細かく設定する必要があり、プログラミング未経験者にはハードルが高いです。

  • システム変更への脆弱性
    Webサイトの画面変更やシステム更新でRPAが動かなくなることがあります。

  • 教育・体制整備の必要性
    RPA担当者を数名置き、運用ルールや保守手順を整備することが現実的です。

実務例

ある中堅企業では、請求書処理をRPAで自動化したところ、担当者が1日かけて行っていた作業を1時間で完了できるようになりました。しかし、RPA設定時の初期トラブルやWebサイト変更対応のため、導入初期は社内IT担当者のサポートが不可欠でした。


ERP導入による経理・業務全体の効率化

ERP(Enterprise Resource Planning)は、企業の財務・人事・在庫・販売などのデータを一元管理する統合システムです。会計ソフトやExcelだけでは難しい横断的なデータ連携・分析が可能になります。

ERP導入のメリット

  1. 社内データの統合管理
    各部署のデータを自動で取り込み、集計や分析に活用できます。

  2. 分析精度の向上
    細かい勘定科目や取引データまで追跡可能になり、管理会計や資金繰り分析の精度が上がります。

  3. 生産性向上と属人化解消
    Excel作業を減らし、社員がより付加価値の高い分析業務に注力できます。

ERP導入の課題

ERPは導入効果が大きい反面、高いハードルがあります。

  • 導入コスト
    小規模企業でも数千万円、数か月単位の期間が必要です。

  • 業務プロセス変更の負荷
    各部署での入力ルールや帳票の書式をERPに合わせる必要があります。

  • 現場の抵抗
    今まで慣れたExcel作業を変えることに抵抗感が生まれやすいです。

  • 保守人材の確保
    ERPは社内で扱える人材が限られるため、トラブル時に迅速対応できる体制を整える必要があります。

実務例

大手製造業では、ERP導入により各支店からの販売データがリアルタイムで集計されるようになり、月次決算の締め作業が従来の10日→3日に短縮されました。しかし、導入初期は操作マニュアルの整備や現場教育に半年以上かかったとのことです。


RPAとERPを組み合わせた活用

RPAとERPは併用するとさらに効果が高まります。

  • ERPで一元管理されたデータをRPAが自動で取り込み、特定帳票や分析資料を生成
  • Excelでの手作業集計を減らし、社員はERPデータの分析・改善提案に集中

この組み合わせにより、経理業務の属人化や手作業の負荷を大幅に削減できます。


最後に

RPAやERPの導入は、短期的にはコストや設定の負荷がかかるため「すぐに効果が出る魔法のツール」ではありません。しかし、長期的に見れば経理事務の生産性向上と属人化解消に大きな効果をもたらします。

経理担当者や経営者は、まずは小規模なRPAプロジェクトから始める、ERP導入は段階的に進める、といった戦略が現実的です。失敗を恐れず、生産性向上の取り組みを継続していくことが、企業全体の競争力向上につながります。


次回以降の記事では、PythonやBIツールを活用したさらなる自動化・分析の事例についても触れていく予定です。

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