なぜ大手企業は都会の大卒を採用したいのか?
少子化が進み採用が難しくなる中、企業が都会の大卒人材を求める背景を、実際の経営者の声を交えながら解説します。地方採用との比較や、企業が本当に重視しているポイントについて考察します。
今回は、なぜ多くの企業が都市部の大学出身者を積極的に採用したがるのかというテーマについて、実際に企業経営者から聞いた話も踏まえながら取り上げます。
新卒採用の難易度が上がっている背景
少子化が進む現在、どの企業も採用に苦戦しています。
特に新卒採用は厳しさが増しており、10年前には大卒の初任給が20万円前後だったのに対し、最近では 30万円に近づく企業も増加 しています。この初任給の上昇スピードからも、新卒採用の難しさがうかがえます。
教育体制が整っている企業では、
- 中途より新卒の方が離職率が低い
- ジョブローテーションや社内研修を通じて長期的な育成が可能
といった理由から、新卒採用の重要度が高くなる傾向があります。
しかし、地方の中小企業は認知度が低いため、そもそも応募者が集まりにくく、新卒採用そのものが難しい現実もあります。
経営者から聞いた2つの採用エピソード
ここからは、実際に経営者の方々から伺った“リアルな採用現場の声”を2つご紹介します。
① 「結局、大卒が欲しい」と語る中小企業の話
ある中小企業では、もともと大卒だけを採用していました。しかし採用が思うようにいかず、近年は高卒採用にも力を入れるようになりました。
高卒であれば、
- 大卒より4年早く入社するため社内ノウハウが蓄積しやすい
- 年齢が若く、吸収力が高い印象がある
といったメリットもあります。
しかし、その社長がふと漏らした一言が印象的でした。
「やっぱり大卒が欲しいんだよね」
社長いわく、同年代の高卒と大卒を比べたとき、大卒の方がどうしても“優秀さ”を感じてしまうとのことでした。
驚いたのは、大学と高校の偏差値がほぼ同じような層で比較しても、その傾向は変わらないという点です。
この話から見えてくるのは、
「教育による成長」よりも「もともとの素質」が入社後の伸びに大きく影響している
という現実かもしれません。
② 都市部の学生を採用したい企業の話
次は、都市部と地方に拠点を持つ企業の採用担当者の話です。
この企業では転勤なしの採用枠を都市部と地方で分けて実施していましたが、採用担当者が悩んでいたのは以下の点でした。
「同じ給与水準で採用しているのに、都市部の学生の方が生産性が高い」
そして同じ偏差値層の学生でも、
- 都市部の大学出身者:優秀な傾向
- 地方大学出身者:都市部より伸びに差がある
という肌感があったそうです。
採用担当者は、都市部と地方の違いとして、
- 都市部は学生の就活競争が激しい
- そのため学生の“就活への必死さ”に差が出る
- Uターン就職はスケジュールがタイトで不利
- 都市部の企業への憧れで応募が都市部に集中する
といった点を挙げていました。
結果として、地方では競争が起きづらく、学生も都会ほど“鍛えられた状態”で就活に臨みにくい環境が背景にあるのかもしれません。
さらに、採用担当者の言葉で象徴的だったのは、
「都市部に拠点を置くこと自体が採用費なんですよ」
というものです。
都市部の家賃の高さはデメリットにも見えますが、裏を返せば優秀な学生を惹きつけるためのコストと言えるのかもしれません。
まとめ:採用は「教育」から「人材そのもの」へシフトしている
様々な会社の話を聞いていると、ベンチャー企業が成長していく過程でたどる採用の傾向として、次の流れが見えてきます。
- 「教育すれば育つはず」と考えて新卒を採用する
- 多くの新卒を見ていくうちに、
“教育”だけでは限界があり、“人材そのもの”の素質が重要だと気づく - 教育よりも採用に力を入れるようになる
特に経理の現場では、
- 請求書処理や仕訳入力のような定型業務は誰でもできる
- しかし会計分析や業務効率化は、いくら教えてもできない人はできない
ということが起こりがちです。
そのため、経理体制を強化したい場合は、
“新しいスキルを習得していける素質がある人かどうか”
を見極めることが重要な観点になります。
以上、都会の大卒採用が重視される背景について、実際の声を踏まえながら整理しました。
人材採用に悩む企業にとって、採用戦略のヒントになれば幸いです。