なぜ銀行マンはあなたの会社に何度も来るのか? ~銀行役員の来訪にがっかりした経理時代の話~
銀行マンが何度も会社に来る理由は理想論と現実論がある。政府系銀行でのシンクタンク経験と通販会社での経理経験から見えた、銀行の本音と面談の活用法を生々しく解説。
はじめに
突然ですが、あなたの会社に足しげく通う銀行マンはいませんか?
昔から付き合いのある銀行だから信頼できる……そんなふうに思っていませんか?
私自身、通販会社の経理担当をしていた頃、銀行の担当者が何度も訪問してきました。
当時は正直、「また来たか…」と少しうんざりしていました。
ただ、銀行マンが何度も来る理由には、理想論と現実論があることも承知しています。
今回はその両方を、私の体験談を交えてお話しします。
銀行マンが足しげく通う「表向きの理由」
一般的には以下のような理由で訪問すると言われています。
- 非財務情報の収集
- 代表者の性格や意思決定スピード
- 社内の雰囲気や稼働状況
- 顧客・仕入れ先の変化
- 関係構築
- 他行より先に情報をもらう
- 融資相談を最初に持ってきてもらう
- 潜在ニーズの掘り起こし
- 売上増 → 運転資金の提案
- 設備老朽化 → 設備投資融資の提案
-
融資後のモニタリング義務
- 競合銀行に融資案件を取られないため
表向きの理由への“現実的な反論”
正直に言うと、地方の中小企業を担当する銀行マンは若手がほとんどで、知識も経験も限られています。
決算書を見ればわかることはたくさんあるのに、彼らにはわかりません。
面談で社長の性格や非財務情報を把握してサービスを提案するなんて、ほぼ不可能です。
非財務情報収集はほぼ建前
- 若手銀行員に社長の性格や社内事情を理解する力はない
- 結果、銀行が会社を訪問しても、面談だけで得られる情報はほとんどあいまい
ちなみに、本気で粉飾決算をしている会社は、むしろ銀行への愛想が異常にいいです。
少しでも悪い印象を持たれないように、経営者も和やかに話してきます。
こうしたリスクを考えると、融資では決算書のような定量的な指標が大事になります。
潜在ニーズ掘り起こしも限定的
- 会社規模が大きくなると、結局金利の安い銀行を選ぶ
- 若手銀行員が「案件を掘り起こす」ほど影響力はない
関係構築の効果は微妙
- 他行より早く情報を得ても、最終的には複数行から提案を比較する
- バッドニュースを先に知らせることは現実的に難しい
真実は「高い金利を許してもらうため」
私が経理担当だった頃、よく来社する銀行マンは、いざ融資提案の際にダントツで高い金利を提示してきました。
社長は長年の付き合いで了承していましたが、正直私は内心「ああ、これが銀行の本音か…」と驚いたのを覚えています。
つまり、会うことで築いた関係性が、そのままお金に変わるのです。
忘れられない体験:銀行役員との面談
ある年、若手担当者が「いつもお世話になっているので、銀行の役員とぜひ会ってほしい」と申し出ました。
私は「面白そうだ」と思い、社長とともに面談に臨みました。
しかし、結果は拍子抜けでした。
- 役員は主力商品名すら知らない
- 初心者向けの会社紹介を一方的にするだけ
- 非財務情報の議論はゼロ
その時に私は悟りました。金融機関の一部には、本当に「会うだけでいい」と思っている人がいるということです。
銀行には、昔から「会う」ということが大きな価値とされている文化があります。
足繫く通う、上司を会わせる、こうしたことで関係性を構築するのが常套手段です。
その結果、本質的な「課題解決」に向けたコミュニケーションがない銀行担当者が多くなっています。
面談を価値あるものにするためのアドバイス
私が経理担当として経験した中で、面談を有意義にするコツは会社側から積極的に質問することです。
質問の例
- 同業他社の地域で盛り上がっている業界は?
- 最近の資金需要は旺盛か?
- 業務効率化や販路拡大に成功した事例は?
注意:為替動向や難しい経済予測は避ける
若手でも感覚的に答えられる範囲の質問にする
期待できる効果
- 面談が単なる世間話から情報収集の場に変わる
- 他社事例や業界情報を得られる
- ビジネスチャンスの種になることもある
まとめ
銀行マンの訪問は、表向きの理由と現実の理由が混在しています。
銀行が会社の課題をヒアリングから整理し、適切なサポートを提供するという理想的な面談はほぼ不可能です。
そのため、経営者・経理担当ができることは:
- 面談を受け身で待たず、自分から質問して情報を引き出す
- 若手担当者でも答えられる範囲で質問を重ねる
- 面談内容を社内で共有し、将来的な意思決定や戦略に活かす
銀行マンと面談する際には、少しでもリアルな情報を得る姿勢を持つことが最も有効です。
生々しい現場の経験から言えるのは、待っているだけでは価値は生まれません。自分から面談を動かしてこそ、有益な時間になるのです。