地政学的リスクとは何か?──経済3団体祝賀会での発言から読み解く
経済3団体祝賀会での日商会頭の発言をきっかけに、政府・日銀の経済報告でも頻繁に言及される「地政学的リスク」とは何かを、企業経営の視点からわかりやすく解説します。
はじめに:なぜ「地政学的リスク」が改めて注目されたのか
年初に行われた経済3団体(経団連・経済同友会・日本商工会議所)の新年祝賀会において、
日本商工会議所の会頭が「地政学的な大不況」という表現を用いたことが、大きな注目を集めました。
この発言が話題になった背景には、
- 世界各地で続く戦争・紛争
- 米中対立の長期化
- 中東情勢の緊迫化
- 資源・エネルギー供給を巡る不確実性
といった、企業努力だけではコントロールできない外部要因が、景気や企業活動に強い影響を及ぼしている現実があります。
実際、政府の月例経済報告や日銀の経済・物価情勢の展望でも、
「地政学的リスク」は毎回のように言及される定番のリスク要因となっています。
では、そもそも「地政学的リスク」とは何なのでしょうか。
地政学的リスクとは何か?
一言でいうと
地政学的リスクとは、国や地域の政治・軍事・外交上の緊張が、経済や金融、市場に悪影響を及ぼすリスクのことです。
ポイントは、
- 「戦争が起きるかどうか」だけではない
- 起きる前の緊張状態そのものが経済に影響する
という点です。
具体例で見る地政学的リスク
① 戦争・紛争
- ロシア・ウクライナ戦争
- 中東地域の武力衝突
→ エネルギー価格の高騰、物流混乱、インフレ圧力
② 大国間の対立
- 米中対立(半導体・安全保障)
- 経済制裁・輸出規制
→ サプライチェーンの分断、調達コスト上昇
③ 政治不安・政権交代
- クーデター
- 政治体制の急変
→ 投資マネーの流出、通貨安、金融市場の不安定化
なぜ政府・日銀は繰り返し言及するのか
政府や日銀の経済報告では、地政学的リスクはしばしば次のような文脈で登場します。
- 「海外経済の不確実性」
- 「金融市場の変動リスク」
- 「資源価格の動向に留意が必要」
これは、地政学的リスクが
- 発生時期が予測できない
- 発生すると影響範囲が広い
- 経済への波及経路が多岐にわたる
という特徴を持つためです。
つまり、平時でも常に警戒すべき「構造的リスク」として扱われているのです。
グローバル化時代にリスクが増幅する理由
かつては「遠い国の紛争」は国内企業にとって影響が限定的でした。
しかし現在は違います。
- 原材料は海外依存
- 生産は国際分業
- 為替・金利は瞬時に連動
このため、地理的に遠い出来事でも、経営への影響は即座に現れます。
地政学的リスクは、
「世界がつながっていることの裏返し」
とも言えます。
企業経営においてどう向き合うべきか
重要なのは、
「リスクを予測して当てること」ではありません。
- どのような経路で業績に影響するのか
- 起きた場合、どこに影響が出やすいのか
- 数字(売上・原価・資金繰り)にどう反映されるのか
を事前に整理しておくことです。
日商会頭の発言が示唆しているのも、
単なる悲観論ではなく、
“外部環境リスクを前提に経営を考える時代に入った”
というメッセージだと捉えることができます。
おわりに
「地政学的リスク」という言葉は抽象的で分かりにくい反面、
今後の経済・経営を考えるうえで避けて通れないキーワードです。
政府・日銀の報告書や要人発言にこの言葉が出てきたときは、
- 何が起きうるのか
- 経済にどう波及するのか
を一段深く読み取ることで、
ニュースの見え方が大きく変わってきます。
本記事が、その理解の一助になれば幸いです。
