経理が押さえるべき会計分析の基本|前年同月比と計画比をどう読むか
経理が自社の会計分析を行う際に最低限押さえるべき「前年同月比」と「計画比」の考え方について、実務視点で整理します。
はじめに
経理が自社の会計分析を行う際、
「数字を集計すること」と「数字を読み解くこと」はまったく別物です。
特に重要だと考えているのが、次の2点を数字でしっかり把握することです。
- 業績が 前年同月比 と比較してどうなっているか
- 業績が 計画値(予算) と比較してどうなっているか
この2軸を押さえることで、
「今の業績は良いのか・悪いのか」「問題があるとすればどこか」を、
感覚ではなく構造として把握できるようになります。
① 前年同月比で業績の方向感を確認する
なぜ前月比ではなく前年同月比なのか
多くの業界では、売上や利益に強い季節性があります。
- 12月に売上が大きく伸びる
- 1月・8月は売上が落ちやすい
- 決算月に費用が集中する
こうした特性がある中で、
単純に「前月比」で判断すると、季節要因と業績トレンドが混ざってしまいます。
そのため、季節性を考慮するためには前年同月比での比較が基本になります。
前年同月比を見る際の注意点
ただし、前年同月比にも注意点があります。
- 前年に一時的な大型案件があった
- 補助金・助成金などの特殊要因があった
- 災害・システム障害などのイレギュラーがあった
このような「前年の特殊要因」を無視すると、
今年の数字を過小評価・過大評価してしまいます。
「前年は平常だったか?」を必ず確認することが重要です。
前月からの変化もあわせて把握する
前年同月比だけでは、直近の変化のスピード感が見えにくい場合もあります。
そのため、
- 前月分の前年同月比との比較
- 季節調整値
- 移動平均(3か月・6か月など)
といった指標を使い、
「足元で業績は加速しているのか、減速しているのか」
をあわせて確認することが望ましいと考えています。
② 計画値(予算)との比較で“質”を分析する
予実差異は「良い・悪い」だけでは判断できない
計画値との比較(予実管理)では、
単純に「未達=悪い」「超過=良い」と判断してはいけません。
重要なのは、
なぜ計画とズレたのか
を、外部環境要因と社内要因に分けて考えることです。
投資フェーズでの未達は問題にならないこともある
例えば、
- 将来成長を見据えた先行投資
- 新規事業立ち上げ期
- 採用強化・システム投資
といった経営方針として織り込んだ投資フェーズであれば、
一時的に決算数値が悪化しても、それ自体は問題ではありません。
むしろ、
「計画通りに投資できているか」の方が重要になります。
数字が良くても注意すべきケース
一方で、数字上は良く見えるが、実はリスクが潜んでいるケースもあります。
- 為替変動により、想定以上に利益が出ている
- 採用が進まず、人件費が結果的に抑えられている
- 広告投資を控えたことで、短期的に利益が出ている
これらは一見すると「業績好調」に見えますが、
- 為替が戻った瞬間に利益が急減する
- 人手不足が将来の成長を制約する
- 投資不足が後から効いてくる
といった形で、先行きに悪影響が拡大する可能性があります。
このような場合は、
数字が良いうちにこそ、経営方針として早めに対策を打つ必要があります。
おわりに
経理による会計分析の価値は、
単なる「結果の報告」ではなく、
- 業績の方向感を正しく伝えること
- 数字の裏にある構造を言語化すること
- 経営判断につながる示唆を出すこと
にあります。
そのための最低限の土台が、
- 前年同月比での業績把握
- 計画値との比較による質的分析
だと考えています。
経理がこれらを押さえ、
「数字を説明できる存在」になることで、
経営に対する貢献度は大きく変わってくるはずです。
