Post

未上場株セカンダリーは企業価値を下げるのか?|評価が下がるケースと下がらないケース

未上場株のセカンダリー取引は企業価値を下げるのか。よくある誤解を整理しつつ、企業価値にマイナスとなるケース・ならないケースをファイナンスの視点から解説します。

未上場株セカンダリーは企業価値を下げるのか?|評価が下がるケースと下がらないケース

「未上場株セカンダリーは企業価値を下げる」は本当か?

未上場株のセカンダリー取引について語られる際、
よく聞かれるのが次のような意見です。

「セカンダリーが行われると、企業価値が下がるのではないか?」

結論から言うと、

未上場株セカンダリー取引そのものが、
自動的に企業価値を下げるわけではありません。

ただし、
条件次第では“下がったように見える”ケースがある
というのが、より正確な理解です。


まず整理:企業価値と株式取引は別物

大前提として押さえておきたいのは、

  • 企業価値(Enterprise Value / Equity Value)
  • 株式の取引価格

は、必ずしも一致しないという点です。

特に未上場企業では、

  • 情報開示が限定的
  • 市場価格が存在しない
  • 取引が個別・相対で行われる

ため、
「その取引価格=企業価値」ではありません。


なぜ「企業価値が下がった」と言われるのか?

未上場株セカンダリーがネガティブに捉えられやすい理由は、
主に次の3点です。


① プライマリーより低い価格で取引されやすい

未上場株のセカンダリー取引では、

  • 直近の資金調達(プライマリー)より
  • ディスカウントされた価格

で取引されることが少なくありません。

理由は明確で、

  • 流動性が低い
  • IPO時期が不透明
  • 情報が限定的

といった 追加リスク
セカンダリー投資家が負担するためです。

この価格だけを見ると、

「評価が下がった」

と感じやすくなります。


② セカンダリー価格が“参照値”として使われる

未上場企業では、

  • 明確な市場価格が存在しない
  • 参考にできる指標が限られる

ため、
一部のセカンダリー取引価格が、
企業評価の参考値として使われてしまう

ケースがあります。

これが、

  • 社内外での誤解
  • 次回ラウンドへの心理的影響

につながることがあります。


③ ネガティブな文脈で行われるケースがある

例えば、

  • 資金繰り悪化による売却
  • 主要株主の撤退
  • 経営不安が噂されている状況

このような背景で行われるセカンダリー取引は、
取引そのものではなく「背景」が企業価値を毀損します。


企業価値が下がらない(むしろプラスになる)ケース

一方で、次のようなケースでは、
セカンダリー取引は企業価値を下げません。


① 成長局面での計画的なセカンダリー

  • 上場までの期間が長期化
  • 企業価値は順調に成長
  • 既存株主の流動性確保が目的

このような状況でのセカンダリーは、

  • ガバナンスの安定
  • 株主構成の健全化
  • 経営への集中

といった プラスの効果 をもたらします。


② 企業が取引条件をコントロールしている場合

多くの未上場企業では、

  • 譲渡承認制
  • 取締役会承認
  • 取得できる投資家の制限

などを設けています。

これにより、

  • 望まない株主の流入防止
  • 評価への悪影響の最小化

が可能となり、
企業価値と切り離してセカンダリーを扱うことができます。


③ セカンダリー価格の位置づけが明確な場合

  • 「流動性ディスカウントを含む価格」
  • 「限定的な株式数での参考値」

といった説明が整理されていれば、
セカンダリー価格が企業価値の代替指標になることはありません。


本当に注意すべきなのは「取引」ではなく「設計」

ここまで見てきた通り、

未上場株セカンダリー=企業価値を下げる

という単純な話ではありません。

本質的に重要なのは、

  • どんな目的で
  • どんな条件で
  • どのように市場に伝わるか

という 設計とコミュニケーション です。


CFO・経営者の視点で押さえるべきポイント

  • セカンダリー価格と企業価値を混同しない
  • 取引の背景・目的を明確にする
  • 株主構成への影響を常に意識する
  • 次回プライマリーとの関係を整理しておく

これらを押さえていれば、
セカンダリー取引は
企業価値を毀損するリスクではなく、
成長を支える選択肢
になり得ます。


まとめ

  • 未上場株セカンダリー取引自体が企業価値を下げるわけではない
  • ディスカウント価格は「流動性リスク」の反映
  • 問題は取引そのものより、背景と設計
  • 経営・財務の視点で整理すれば、適切にコントロール可能

未上場株セカンダリーは、
成熟しつつある資本市場の中で、
企業と投資家双方にとって重要な役割を担い始めている

と言えるでしょう。

This post is licensed under CC BY 4.0 by the author.