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イラン情勢と日本企業への影響を企業収益予測にどう盛り込むか:原油高・円安・日銀政策を深読みする

イラン情勢の緊迫化が日本企業に与える影響を、原油高・円安・日銀政策の観点から徹底解説。ウクライナ戦争時のデータを応用した収益予測の作り方まで、実務に役立つ視点でまとめた記事です。

イラン情勢と日本企業への影響を企業収益予測にどう盛り込むか:原油高・円安・日銀政策を深読みする

イラン情勢が日本企業に与える影響を解説

日本企業にとって、今回のイラン軍事衝突がどれほど深刻な意味を持つのか。
結論から言うと、影響の柱は 「原油高」「円安」 の2つです。

特に、

  • イランがサウジアラビアを含む複数の湾岸産油国へミサイル・ドローン攻撃
  • 世界のタンカーが通過する ホルムズ海峡 の輸送が事実上ストップしたこと
    上記は日本にとって極めて致命的なニュースです。

なぜなら日本の原油輸入の約9割は中東依存であり、ホルムズ海峡を通らないと入ってこないからです。


原油高 → 日本の物価へ“静かに広がる”波紋

原油高は以下のように日本経済に広く連鎖します。

  • ガソリン代上昇(物流コスト増)
  • 火力発電のコスト増 → 電気代上昇
  • プラスチック・化学製品のコスト増
  • 物流・航空・海運すべての費用増加

つまり、「すべての産業の土台」が値上がりする ということです。

これが“悪い物価上昇(コストプッシュ)”である理由は、

需要が強まって物価が上がっているわけではない

からです。

企業にとっては売上が伸びないのに費用だけ上がる、非常につらい局面です。


日銀が利上げできない円安シナリオ(ウクライナ戦争との類似)

今回のイラン情勢は、構造的に ウクライナ戦争初期と非常によく似ています

  • 戦争により原油・天然ガスが急騰
  • 世界的なサプライチェーンの停滞

その際、日銀 は景気悪化を懸念して利上げを見送リ続けました。

今回も同じ構造です。

一方で FRB(米国)は、日本よりも物価感応度が高い国であり、
「景気が悪化してもインフレ退治を優先する」傾向があります。

結果として、

  • アメリカは利上げ
  • 日本は利上げできない

日米金利差拡大 → 円安がさらに進む

この流れが再来する可能性が高いと考えられます。


円安 → 中小企業にはむしろ逆風

輸出企業にとってはメリットがある円安。ただしそれは大企業の話です。

  • 原材料の多くを輸入に頼る中小企業は仕入価格が上昇
  • 電気代・燃料費の増加が直撃

つまり、
株価(=大企業中心)は上がるが、中小企業の景況感は悪化
という“ねじれ”が起きやすくなっています。

地方企業ほどこの影響を強く受けます。


原油高 × 円安 の“ダブルパンチ”シナリオ

日本企業にとって最悪なのが、

  • 原油高
  • 円安

が同時に発生するケースです。

これは 仕入れコストが2〜3倍の速度で上昇する ようなものです。


では企業は、どう予測を立てればいいのか?

中小企業が自社の先行きの収益を予測する方法について、
実務的に整理すると以下の3ステップになります。


① ウクライナ戦争前後のコスト上昇率を参考にする

  • ロシア侵攻前(2021年度)
  • 侵攻後(2022年度)

この2年度の比較が「実際に日本企業が経験したショック」です。

例えば、自社の経費が以下の数字だったとします。
2021年度 電気代 = 1000万円
2022年度 電気代 = 1100万円
上昇率 = 10%

これを今回の収益予測に流用するのです。


② 稼働率が変わるならその係数も掛ける

工場稼働が来年度120%になるなら、

前年の電気代 × 稼働率120% × 物価上昇10%

のように掛け合わせる必要があります。


③ 「正確すぎる数字」はむしろ混乱のもと

過去のガソリン代の上昇率が8.25%だからといって、
そのまま収益予測に適用するのは得策ではありません。

8.25% のような“中途半端な数字”は逆に理解の妨げになる。

実務では 「10%で統一」 する方が説明しやすく、関係者も覚えやすい。

  • 電気代:10%
  • ガソリン代:10%
  • 輸送費:10%

とざっくり一本化した方が、全体像を共有しやすいです。


為替前提の置き方も「ざっくり10%ルール」でOK

ロシア進行の前後でドル円が

  • 2022年:115円 →
  • 2023年:130円

約10%の円安 になったことを参考に、今回も同程度の円安を前提に置いてよいでしょう。

金融機関に提出する経営改善計画や中期計画でもよく使われる手法です。


経営者と経理担当者が議論すべき「前提条件」の統一

収益予測を作るうえで最も重要なのは、

  • 誰が
  • どのような想定で
  • どの数字を使ったか

を明確にすること。

経営者によっては、

  • 「悲観シナリオを前提にして保守的に経営したい」
  • 「融資のためにある程度ポジティブな数字を見せたい」

など、意図が異なります。

この“前提条件のすり合わせ”ができていないと、
経営計画がブレる原因になります。


まとめ:イラン情勢は「ウクライナ戦争の再来」と考えれば対策が打てる

本記事の要点を整理すると、

  1. イラン情勢は日本に原油高・円安のダブルパンチ
  2. 日銀は利上げできず、さらに円安圧力が強まる可能性
  3. 中小企業は大企業以上にダメージを受ける
  4. 収益予測はウクライナ戦争時のデータが“流用可能”
  5. 計算は「10%ルール」でシンプルにするのが現実的

という構造です。


This post is licensed under CC BY 4.0 by the author.