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資金繰り表を作るなら、支出は「変動費・固定費」だけでは不十分?3分類で考えるキャッシュの流れ

資金繰り表を作成する際、支出を「変動費・固定費」でしか整理していないと、実態を正確に把握できません。この記事では、資金繰りを正しく説明するための3分類(固定支出・変動支出・スポット支出)の考え方と、経営者・金融機関とのコミュニケーションで役立つ整理方法を解説します。

資金繰り表を作るなら、支出は「変動費・固定費」だけでは不十分?3分類で考えるキャッシュの流れ

資金繰り表を作るなら、支出は「変動費・固定費」だけでは不十分?

3分類で考えるキャッシュの流れ

資金繰り表を作成する際、「支出を変動費と固定費で分ける」という考え方はよく使われます。
しかし、実際にキャッシュの動きを見ていくと、この2分類だけでは説明がつかない月次の資金変動が多く存在します。

特に、金融機関や経営者への説明で「なぜこの月はキャッシュが減ったのか?」と問われたとき、支出の性質をもう少し深く整理しておくことが非常に有効です。

本記事では、資金繰り表をより実務的に活用するための「3分類による支出の考え方」を解説します。


🔹 変動費・固定費の考え方はPLベース

まずおさらいとして、一般的に費用の分類は次のように整理されます。

  • 変動費:売上に比例して発生する費用(例:原材料費、販売手数料など)
  • 固定費:売上に関係なく一定額発生する費用(例:家賃、人件費など)

この考え方は損益計算書(PL)上の分類であり、利益構造の把握には適しています。
しかし、資金繰り表で扱うのは「キャッシュの支出タイミング」であり、PLとはズレることがあります。

たとえば、

  • 経費を「発生時点」で計上するPL
  • キャッシュを「支払時点」で計上する資金繰り表

この違いが、資金繰りの実態を見誤る原因になりがちです。


🔹 資金繰りでは3分類で整理するのが実務的

資金繰り表では、以下のように支出を3つに分類すると管理が格段にしやすくなります。

区分 内容 主な項目例
固定支出 毎月ほぼ一定額の支出 家賃、給与、水道光熱費、借入返済、顧問料など
変動支出 売上や生産量に比例して増減する支出 原材料仕入れ、発送費、販売手数料など
スポット支出 特定の時期にだけ発生する一時的支出 税金、賞与、設備投資、退職金など

この3分類を導入すると、「どの支出が毎月固定で、どれが一時的に発生するのか」が明確になります。
その結果、キャッシュが大きく減る月を事前に予測できるようになるのです。


🔹 勘定科目ではなく「支出の性質」で判断する

ここで注意したいのが、「外注費」「広告費」など勘定科目で分類しないという点です。

たとえば:

  • コールセンターに依頼しており、応答件数に応じて料金が変わる → 変動支出
  • 顧問デザイナーに毎月定額で支払っている → 固定支出
  • フリーランスにスポットでイラスト制作を依頼した → スポット支出

このように、支出の発生パターン(頻度・金額の安定性)で分類するのがポイントです。


🔹 なぜ3分類で整理すると説明がスムーズなのか

資金繰り表を見る人(経営者・金融機関)は、主に以下を気にします。

  1. 資金ショートのリスクがあるか
  2. 現預金残高が安定しているか
  3. 急な資金変動の要因は何か

これらの質問に対して、3分類で支出を整理しておくと、説明が非常にスムーズになります。

例1:一時的に現金が減少している場合

「この月は賞与と法人税の支払いが重なっています(スポット支出です)。」

例2:毎月じわじわと残高が減っている場合

「借入金の元本返済が続いており、固定支出が徐々に重くなっています。」

このように、支出を「固定・変動・スポット」で説明できると、
資金繰りの動きを誰にでも理解しやすく伝えられるようになります。


🔹 現場では「無意識の整理」に頼ってしまいがち

多くの経営者は、「税金は5月」「賞与は7月・12月」「借入返済は毎月」と、
個々の支払時期を頭で把握しています。

しかし、それを資金繰り表という形で全体像として整理するのは意外と難しいものです。
スポット支出を抜け漏れなく可視化することで、「あの月に現金が急減する理由」が明確になり、
金融機関との面談時も説明に迷いません。


🔹 資金繰り表に「備考欄」を設けるのも効果的

資金繰り表はフォーマットが決まっていません。
社内管理用であれば、説明しやすいように自社仕様にカスタマイズして構いません。

おすすめは、各月の最終行に「備考欄」を設けておくことです。

現金残高 備考
5月 8,000万円 法人税支払い 2,000万円
7月 6,500万円 夏季賞与支給 1,000万円
10月 4,500万円 新工場設備 前払金 2,000万円
12月 5,000万円 借入実行 3,000万円(新規資金調達)

このようにしておくと、「どの月に何が起きるのか」がひと目で分かり、
社内外の関係者との共有もスムーズになります。


🔹 まとめ:資金繰り表の目的は「説明できること」

資金繰り表の最終目的は、現金残高の予測を正確にし、相手に説明できることです。
そのためには、支出の中身を「変動費と固定費」だけで見るのではなく、
キャッシュの動きに応じて整理することが重要です。

固定支出・変動支出・スポット支出
― この3分類を意識するだけで、資金繰り表の“説明力”が一気に上がります。


もし、こうした支出分類を自社の資金繰り表に落とし込む方法に迷う場合は、
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関心のある方は、ぜひお問い合わせください。


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