紙の給与明細から気づいた二重入力―既存システムの連携で年末調整業務を効率化した話
税理士事務所で実際に経験した、給与データの二重入力を削減した業務改善事例を紹介します。高額なシステム導入を行わなくても、既存システムの連携機能を活用することで生産性向上を実現できました。
紙の給与明細から気づいた二重入力―既存システムの連携で年末調整業務を効率化した話
税理士事務所では、労務部署と税務部署に分かれて事務代行を行っているところがあります。
- 労務部署:給与計算
- 税務部署:年末調整や税務申告
という役割分担です。
この体制自体は特に珍しいものではありません。
しかし、ある年末調整の時期に、「同じ情報を二度入力しているのではないか?」という問題点を見つけました。
今回は、携わった生産性向上事例の中から、この二重入力をデータ連携に置き換えたケースを紹介します。
当時の業務フロー
労務部署では、毎月の給与計算を給与ソフトで行っていました。
その際、従業員の氏名や住所などの基本情報もシステム上で管理しており、給与明細一覧を出力して保管していました。
一方、年末調整を担当する税務部署では、
- 労務部署が保管している紙の給与明細一覧を確認する
- 年末調整ソフトへ従業員情報を手入力する
- 顧問先から受領した扶養控除等申告書の内容を入力する
という流れで作業を進めていました。
つまり、すでに別の部署で登録済みの従業員情報を、再び手入力していたのです。
「紙の元データはどこにあるのか?」
紙の給与明細一覧を見ながら、
この一覧を作った元データはどこにあるのだろう?
と考えました。
紙で出力されている以上、元となるデータが存在するはずです。
そこで調べてみると、給与ソフトと年末調整ソフトの間でデータ連携機能が用意されていることが分かりました。
すべての情報を連携できるわけではありませんでしたが、
- 氏名
- 生年月日
- 住所
- その他の基本情報
などを取り込むことができました。
手入力作業を大幅に削減
従来は、税務部署が従業員を一人ずつ入力していました。
しかし、既存データを活用することで、基本情報の入力作業を大幅に削減できました。
もちろん、
- 扶養控除等申告書の内容
- 保険料控除の内容
など、年末調整特有の情報については別途入力が必要です
それでも、最初からすべてを入力する必要がなくなったことで、作業時間の短縮につながりました。
業務改善は高額なシステム導入だけではない
DXや業務改善というと、
- 新しいシステムを導入する
- 高額なツールを購入する
といったイメージを持たれることがあります。
しかし実際には、
すでに持っているデータを活用できないか?
という視点だけで改善できるケースも少なくありません。
今回の事例でも、新しいシステムを導入したわけではありません。
既存システムに備わっていた機能を活用しただけです。
データ連携は難しく考えなくていい
連携というと難しく考える必要はありません。
給与ソフトと年末調整ソフトに共通するデータを、所定のフォーマットのCSVファイルに事前に入力し、そのCSVファイルをそれぞれのソフトに取り込むようにするのです。
今回の事例の税理士事務所では、弥生給与と年調・法定調書の達人のデータ連携を実施しました。
現在では、会計ソフトと給与ソフトが異なる会社のものでも、連携できることが多いです。
税理士事務所のみならず事業会社の経理課や労務課の担当者は、こうした連携できる機能はないか?という観点から業務改善アイデアが生まれるかもしれません。
まとめ
今回の業務改善では、以下のように考える習慣が必要です。
紙で見えている情報には、元データが存在するかもしれない。
そして、
同じ情報を複数回入力していないか?
という視点を持つことが、業務改善の第一歩になると感じています。
業務改善は、必ずしも大規模な改革から始まるわけではありません。
日々の業務の中で感じる小さな違和感が、生産性向上のきっかけになることもあるのです。