マクロ経済・ミクロ経済~月曜から夜更かしは究極のミクロ経済~
マクロ経済とミクロ経済の違いを、日経新聞、月曜から夜ふかし、アイス、コロナ禍などの身近な事例を使って解説。企業分析や投資判断にどう活かせるのかも紹介します。
今回はマクロ経済とミクロ経済の違いについて、やや砕けた解説記事です。
マクロ経済とミクロ経済の違いについて、「教科書的な説明を聞いてもいまいちピンとこない」という声をよく聞くので、マニアックな事例を用いながら解説します。
また、記事の後半では、マクロ経済とミクロ経済の違いを覚えることで、投資・企業分析、経理担当者が意識してほしい、企業を客観的に評価するときのポイントもお伝えします。
まずは教科書的に考えてみる
まず、教科書的な解説をすると、マクロ経済とミクロ経済の違いは、「大きな経済圏として傾向が出ているか」です。
国や地域、一般論といった経済全体について語るときはマクロ経済、一方、個人や個別企業について語るときはミクロ経済です。
これではピンとこないと思うので、ここからは具体例を提示します。
日経新聞の一面は「マクロ経済」
日経新聞は全国で購読されています。
そのため、内容も経済全体に関する内容が中心です。
- 国の政策
- 全国チェーンの飲食店
- 自動車業界の輸出動向
- 為替の値動き
- ガソリン価格の高騰
こうした経済全体として見られる動向は、まさにマクロ経済と言えます。
ただし、マクロ経済がそのままミクロ経済と同じ状況かというと、必ずしもそうではありません。
月曜から夜ふかしは究極の「ミクロ経済」
「月曜から夜ふかし」では、個人的なニュースを聞いていきますが、インタビューを受ける人は、それぞれ個別の事情を持っています。
- 終電を逃してしまった
- スマホの検索履歴が恥ずかしい
- 転職したばかり
- 上京してきた
こうした個人的なニュースは、まさにミクロ経済です。
「経済ってお金の話じゃないの?」と思われたかもしれません。
しかし、行動経済学という言葉があるように、直接お金が動いていなくても、これらは立派な経済なのです。
ニュース番組はなぜ「現場から中継」をするのか
私は子供のころに不思議に思っていたことがあります。
ニュース番組では、なぜ毎回のように現場から中継でつなぐのかと。
もちろん、災害の報道では、現場の映像を伝えることが必要ですが、リポーターの人が聞き取りにくい音声で雨風に打たれながら原稿を読み上げるのを見ていると、「テレビ局のアナウンサーが原稿を読めばいいのに」と思ってしまいます。
また、首脳会談の報道では、現地にリポーターはいるものの、会場から遠く離れた場所から原稿を読み上げることもあります。
こうなると、もはや現地の映像を映す意味は大きくない気がします。
では、なぜこうした現場からの中継があるのかというと、「臨場感が伝わらないから」です。
つまり、現場の映像というミクロ情報を伝えることは臨場感が伝わり、状況がイメージしやすいのです。
これが、マクロ経済とミクロ経済の違いと共通している部分です。
「アイスが売れている」はマクロ経済?ミクロ経済?
今度はマクロとミクロを企業分析に落とし込んでみます。
「全国各地が記録的な猛暑です。外出を控える動きが広がり、アイスがあまり売れていません」というニュースがあったとします。
日本全体でこうした傾向がみられるという観点では、マクロ経済です。
では、ミクロ経済ではどうでしょうか?
「近所の商店街のカフェが新作のアイスを発売しました。アイスを求めて人だかりができています。」
これは、個別のお店についてのニュースなのでミクロ経済です。
さて、普通にニュースを聞いていると、「ふーん」で終わってしまいますが、マクロ経済とミクロ経済の違いが意識できると、これらのニュースを企業分析として落とし込めてきます。
あのカフェのアイスは今後も売れるのか
「全国的にはアイスの売れ行きが悪い中、近所の商店街のカフェでは新作アイスが売れている」
この情報を聞くと、「このカフェの経営はよさそうだな」と思う人が多いと思います。
実は、そうでないケースがあります。
このカフェでは、新作アイスがヒットしました。
ほかのお店ではアイスが売れない中でのヒットなので、全体的な傾向とは異なるという意味では、典型的なミクロ経済圏です。
しかし、翌日以降も猛暑日が続くとどうでしょう?
せっかくの新作アイスという目新しさがあっても、徐々にお客さんが減っていく可能性があります。
また、新作アイスがヒットするかもと思って大量に仕入れていた材料がロスになってしまうこともあります。
つまり、「新作アイスがヒットしたからうちのカフェは安心だ」というところで思考が止まるのではなく、「引き続き猛暑日が続くから、来店客数が減る可能性が十分ある」というマクロ的な視点を持てるか、が企業分析では重要です。
コロナ禍はマクロ経済とミクロ経済がわかりやすい
コロナ禍も、マクロ経済とミクロ経済を説明するのにわかりやすい題材です。
全国でコロナ感染者が増加したことで、外食産業を中心に多くの企業の経済活動が混乱しました。
ファミレスでのお弁当販売や、個人店の休廃業など、ミクロ経済では個々の店舗が様々な対応を迫られました。
※これらの対応は全国的な傾向という意味ではマクロ的な傾向ともいえます。
こうした中、需要が増加したものもあります。
- リモートワーク
- 健康食品
- マスク
- ゲーム・アニメ
特需となった業界では、需要増加に伴い、社員の採用強化、工場の新設などの投資を行う企業も増えました。
この投資判断は、マクロ経済とミクロ経済を理解していないと企業生命にかかわります。
コロナ禍のようなマクロ的な要因で拡大した需要は、その影響がなくなると需要が減少する可能性が大いにあります。
さらなる需要の拡大を見越して行った過剰な投資は負担となって、会社のキャッシュを圧迫するかもしれません。
つまり、自社の業績の変動が「外的要因」なのか、それとも企業努力による「内的要因」なのかを分析する上で、マクロ経済とミクロ経済を体系的に考えられる思考が大事なのです。
定量的に分析する
今度は、こうした要因を定量的に分析する方法を一部紹介します。
例えば、輸入しているアサイーの値段が前年に比べて20%上がったとします。
この値段の上昇がどんな要因なのかを定量的に分析します。
分析の前には仮説を立てます。
マクロ要因では、為替円安やアサイーの需要増加に伴う需給のひっ迫があります。
一方、ミクロ要因では、企業の人件費上昇に伴う価格転嫁が考えられます。
この仮説を検証する際、マクロ要因は統計データを取得しやすいので、マクロ要因の影響度合いを先に検証するとよいです。
例えば、前年に比べて、為替が10%程度円安に動いていて、アサイーの消費量が5%増えているような状況なら、残りの5%はミクロ要因の人件費の価格転嫁だと推測できます。
こうして要因を分解していくと、為替変動やアサイーの消費量によって、先行きどのくらい価格が上昇してきそうかといったおおよその検討がつけられるようになり、経営計画の策定がより緻密になってきます。
こうした分析ができるようになると、「日銀が金融緩和を継続する姿勢を見せているから、円安が続く可能性が高い、そうなると、アサイーの輸入価格は高止まりするかも」といった予想が自然とできるようになり、銀行や経営陣、株主への業績見通しの説明にも説得力が出てきます。
本来はもっと専門的な統計処理を行うこともありますが、経済全体や業界全体と自社固有の要因を区別して分析できるようになるというのは、一段上の会計分析といえるでしょう。
まとめ
マクロ経済とミクロ経済の違いは、国や一般論といった経済全体の話なのか、個人や個別の企業の話なのか、という点でした。
これを日常生活に例えると、日経新聞の一面に載るような経済ニュースはマクロ経済ですし、月曜から夜ふかしに登場する人たちはミクロ経済です。
また、企業分析で例えると、アイスの販売は、酷暑による外出する人の減少はマクロ的な業績下押し要因である一方、新作アイスのヒットはミクロ的な業績向上要因です。
こうした例をイメージしながら経済ニュースや企業決算を読み込むと、企業業績の先行きが見通しやすくなり、経営判断や投資判断に対する不安が大きく減少します。
何より、こうしたマクロ経済やミクロ経済の考え方を身につけるには、教科書で勉強しても身につきにくい部分ではあるので、AIとの対話や会計のプロとの対話を通して、こうした感覚を養うのもスキルアップにつながるのではないかと思います。