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スクエニ決算徹底解説?~クラウドは本当にスクエニを救ったのか?~

FFやドラクエなど、人気ゲーム会社のスクウェア・エニックスの決算を徹底解説。ゲーム会社のビジネスモデルを解説するほか、過去の決算の数字からFF7が業績に与える影響を分析していきます。そして、クラウド以外にスクエニを救ったキャラクターとは?

スクエニ決算徹底解説?~クラウドは本当にスクエニを救ったのか?~

FF7REMAKE

スクウェア・エニックスは8月10日に2027年3月期第1四半期決算を発表し、利益率が改善傾向にあります。

また、それに先駆けて6月6日には、「ファイナルファンタジー7 リベレーション」が2027年春に発売されると発表されました。

本記事では、そんな日本のゲーム開発大手のスクウェア・エニックスの決算資料から経営状況を徹底解説。

ビジネスモデルの解説に加え、FF7などの人気タイトルが業績に与える影響を数字から読み解いていきます。

クラウドは世界だけでなく、スクエニを救ったのでしょうか?

また、スクエニを支え続ける光の戦士とは?


1. 直近の四半期決算は好調

まずは、2027年3月期第1四半期決算を見ていきます。

PL 2027年3月期 第1四半期 2026年3月期 第1四半期 前年同期比
売上高 784億円 593億円 +32%
営業利益 170億円 90億円 +89%

四半期ベースでは、PS5とPC版で販売されていた「FF7リバース」をNintendo Switch 2やXbox向けにも販売したことなどから、売上高と営業利益ともに前年同期比で増加しています。

しかしながら、四半期ベースの業績はFF7のような大型タイトルの販売時期によって業績が左右されやすいことから、企業分析では新作ゲームの発売スケジュール等も確認しながら数字を見ていく必要があります。

その意味では、人気ゲーム『ファイナルファンタジー7』のリメイクシリーズ最終章となる『ファイナルファンタジー7 リベレーション』の発売が2027年春に予定されており、期待が高まっています。


2. スクエニの業績は安定していない

それでは、年間の業績推移を見てみると、どうでしょうか?

スクエニ業績推移

また、利益だけをピックアップすると以下の通りです。

スクエニ営業利益推移

これらのグラフをみてわかる通り、コロナ禍以降、2022年3月期までは売上とともに利益が成長してきました。

一方、その後の売上は頭打ち感が出ており、利益率にも波があります

なぜこれほど年度によって業績に波があるのでしょうか?


2. 主力のエンタテインメント事業は開発費との戦い

主力のエンタテインメント事業の業績推移と主なタイトルの販売時期は以下の通りです。

スクエニエンタテインメント事業業績推移

HD「High Definition(高精細)」ゲームを中心に開発費が大きいことが経営課題となっており、これが売上によって、利益率が大きく変わってしまう要因となっています。

また、ゲーム会社は開発時に多額のキャッシュが出ていくという面から、安定したキャッシュを獲得することも長年の課題となっています。

ここからは、各年度をさらにフォーカスして、業績推移を大型タイトル中心に分析していきます。


3. 5年越しのクラウドはスクエニを大きく救った

2015年にFF7のフルリメイクの開発が発表されてから5年が経った2020年4月、PS4でFF7リメイクが発売されました。

この時期はコロナが流行し、「巣ごもり需要」も相まって、需要が拡大。

発売後3日で350万本の大ヒットを記録し、約4か月で500万本、その後も販売を伸ばし、累計販売本数は700万本を突破する大ヒットとなりました。

これは、発売直後の販売ペースでは、2019年発売の『キングダムハーツ3』にも匹敵する大ヒットとなりました。

※キングダムハーツ3は約13年ぶりのナンバリングタイトルで、発売から約1週間で500万本を突破し、シリーズ史上最速の販売記録となりました。

また、巣ごもり需要を追い風に、他のゲームも売上を伸ばし、2021年3月期は売上・利益ともに高水準となりました。


4. クラウドに加えて、光の戦士もスクエニを助けにやってくる

翌年度の2022年3月期は「FF7 REMAKE INTERGRADE」の発売もあって、FF7が息の長い販売を継続するともに、FF14が収益を拡大します。

2010年に正式サービスを開始したオンラインRPGのFF14は評価が低かったほか、開発コストが膨らみ、大幅な立て直しを余儀なくされました。

2013年に新生FF14として生まれ変わったFF14はその後、安定的な成長を続け、コロナ禍によるゲーム需要をしっかり獲得。

2021年に大型拡張パッケージ『暁月のフィナーレ』を発売し、10年間にわたる物語の一区切りを迎える中で、課金会員数も大きく増加

課金会員数を含む累計登録アカウント数も2500万人を突破し、サーバー混雑が深刻になるほどの人気ぶりでした。

その後もプレイヤー層を拡大し、2024年には累計登録アカウント数が3,000万人を突破し、過去最高の同時接続者数を更新するなど、現在に至るまで重要な収益源となっています。


5. クラウドがいなくなると業績は低迷した

2022年3月期までは業績が拡大していたスクエニですが、その後は業績が低迷します。

引き続きFF14が高い収益を維持していたものの、HDゲームに至っては赤字を計上しています。

2023年3月期には「FORSPOKEN」を新規大型IPとして投入しましたが販売は期待に届きませんでした。

また、2024年3月期は満を持して、フルリメイク版FF7の続編「FF7 リバース」を発売しました。

当初はPS5限定ということもあって販売の初動は期待に届かず、新作ゲーム「FOAMSTARS」の販売が伸び悩んだことも合わせてセグメント利益は赤字になりました。

なお、ここでゲーム会社の会計分析で注意しなければならない点として、ゲーム開発費の計上タイミングの難しさがあります。

ゲーム開発時にキャッシュが先行して出ていきますが、開発時点ですべての開発費を経費計上するわけではありません。

開発費はゲーム販売に合わせて経費として計上されますが、ゲーム販売が低迷すると、計上される開発費が利益を圧迫し、場合によっては大きな赤字を計上することになるのです。

※会計的に言い換えると、将来の収益によって開発費を回収できないと判断された場合には、コンテンツ制作勘定の評価減が発生し、利益を大きく押し下げる可能性があります。


6. HDゲームの赤字を教訓に筋肉質な経営へ

HDゲームセグメントの赤字を受けて、スクエニは筋肉質な経営、すなわち「利益率を重視した経営」を目指し、取り組みを加速させています。

開発リソースの再配分

新規コンテンツを開発し続けるゲーム会社にとって、開発コストの大きさはそのままリスクにつながります

同じ利益の額でも、「コストの大きさ=リスクの大きさ」につながりかねません。

このため、開発リソースを再配分し、利益率の改善を進めています

その影響が顕著に出ているのは、「スマートデバイス・PCブラウザ等」のセグメントです。

プレステなどの据え置き型ゲーム機は数年おきに新型機が投入されるため、既存のゲームソフトは遊べなくなるリスクがあります。

一方で、スマホやPCブラウザ向けゲームは、家庭用ゲーム機の世代交代とは異なる形で長期運営できるため、ヒットタイトルを長期間運営しやすいという特徴があります。

そのため、「スマートデバイス・PCブラウザ等」のセグメントでは、運営タイトルを次々と増やし、売上を拡大していきました。

ただし、イベントを含めたコンテンツ拡充コストや運用コストがかかり続けることから、売上規模に対して全体の利益率は高くありませんでした。

そのため、2024年~2025年にかけて、「ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト」など、採算性などを考慮して、複数のタイトルのサービスを終了しました。

こうしたタイトル整理によってセグメントの売上は大きく減少しました。一方で、運営タイトルの選択と集中や運営コストの最適化などにより、利益率の改善が進んでいます。

既存コンテンツのカタログ販売

近年、ゲーム会社で共通している経営改革がカタログ販売です。

既存のゲームタイトルを割引等で新しい顧客層に販売することです。

ダウンロード販売が主流になってきたことで、古いゲームタイトルを顧客に提供することが容易になっています。

また、カタログ販売では新規ゲーム発売時とは異なり、既存タイトルを販売するため、新作開発に比べて追加の開発費を抑えながら売上を獲得しやすく、利益率の改善にもつながりやすいです。

また、こうした販売は顧客にIPそのものを好きになってもらうきっかけづくりにもなり、新規ゲームの販売にもつながる点でも、客単価の向上に寄与すると言えます。

このように、利益率改善のため、スクエニは経営改革を進めています。


7. コロナ禍以降は円安にも支えられてきた

スクエニを救っている勇者はクラウドや光の戦士だけではありません。

円安も業績を大きく支えています

スクエニは2026年3月期には海外のタイトル販売本数が75%以上となっており、前期比でも海外販売比率が大きくなるなど、海外販売が業績に与える影響は大きくなっています

スクエニタイトル販売比率 ※数字は2026年3月期決算資料より抜粋。HDゲームとMMOに含まれるタイトルの地域別販売本数。

こうした中、為替の推移をドル円で見ると、コロナ禍以降、円安が大きく進んだことがこうした海外販売比率の高さと相まって、業績を支えています。

ドル円については、2016~2020年ごろはおおむね1ドル=110円程度で安定していたものの、2026年では160円程度まで円安が加速しています。

今後も業績を分析するにあたっては、販売本数に加えて、為替リスクを抱えていることには注意が必要です。


7. 今後のカギはクラウドと光の戦士を超える勇者が現れるか

先行きの見通しを考えると、短期的には発売が期待される完結編「FF7 リベレーション」が控えているほか、FF14も人気が継続する形で業績は一定程度下支えされることが期待されます。

一方で、「FORSPOKEN」が教訓となったように、新規大型IPの育成には苦戦しており、長期的な業績の見通しは不透明感が強い部分があります。

改めて今後の業績を分析するポイントを整理すると、

  • FF7やFF14のような息の長いタイトルがどこまで持続するか
  • 新規IPを創出していけるか
  • 為替リスクが顕在化するか
  • 開発リソースの再配分による利益率の改善が今後も継続するか
  • 既存タイトルがカタログ販売でどのくらい業績を下支えするか

といった点に注目するといいでしょう。


まとめ

ゲームIPはマンガやアニメとともに、グローバルで見ても競争力のある日本のキラーコンテンツです。

一方で、

  • 開発費高騰
  • 新規IP創出
  • 為替リスク

など多くの課題があります。

また、コンテンツ産業の競争激化という意味では、YouTubeのような動画コンテンツとも競合していますし、国内の人口減少に伴い、さらなる海外市場の拡大も課題です。

ただし、ゲーム会社の本質的な経営指針は、

IPを創出し、育てる

ということはこの先も変わらないでしょう。

果たして、既存の勇者が強くなるのでしょうか。

それとも、新しい勇者が出てくるのでしょうか。


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