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【企業分析】全東信の沿革から見える成長戦略とは?大型設備投資と倒産のタイミングを考察

全東信の沿革を時系列で分析すると、自社ビルの取得・建て替え、加盟店拡大、増資など積極的な成長戦略が見えてきます。なぜコロナ直後ではなく2026年に倒産したのか、公開情報をもとに考察します。

【企業分析】全東信の沿革から見える成長戦略とは?大型設備投資と倒産のタイミングを考察

※本記事は公開されている沿革や各種資料をもとにした分析・考察です。実際の倒産原因については、破産管財人や関係者から正式に公表されたものではありません。

はじめに

前回の記事では、

「決済代行会社・全東信はなぜ倒産したのか」

というテーマで、

  • コロナ禍による夜間飲食市場の急縮小
  • 立替払いというビジネスモデル
  • 営業組織という固定費
  • 金利上昇

などの観点から分析しました。

しかし、その後、全東信の公開されている沿革を詳しく調べていくと、もう一つ非常に興味深い事実が見えてきました。

それは、

2010年代後半に大規模な設備投資を相次いで実施していたこと

です。

本記事では、会社の沿革を時系列で整理しながら、全東信の成長戦略と倒産までの流れを考察します。


全東信は成長企業だった

沿革を見ると、全東信は決済代行会社として着実に事業を拡大してきました。

例えば、

  • クレジットカード会社との提携拡大
  • 決済システムの導入
  • 加盟店向けサービスの充実
  • 電子マネー対応
  • スマートフォン決済対応

など、時代の変化に合わせてサービスを拡充しています。

加盟店数も右肩上がりに増加しました。

  • 2001年 10,000店舗
  • 2011年 100,000店舗
  • 2018年 200,000店舗

まさに成長企業そのものだったことが分かります。

全東信加盟店数の推移


成長とともに進められた大型設備投資

沿革の中で特に目を引いたのが、自社ビルに関する記載です。

自社ビル取得

1999年

  • 大阪本社ビル購入

2000年

  • 赤坂ビル購入

その後も事業を拡大し、

東京支社も銀座へ移転しています。

ここまでは、成長企業として自然な流れに見えます。

しかし、その後さらに大きな投資を実施します。


2015年・2017年に相次いで建て替え

沿革には、

  • 2015年 全東信赤坂ビル建て替え完成
  • 2017年 大阪本社ビル建て替え完成

と記載されています。

全東信の本社・営業所ビル

これらのビルは、

  • 赤坂
  • 京橋(銀座至近)
  • 大阪・島之内

という立地条件の良い場所にあります。

特に赤坂・京橋は東京都心でも地価の高いエリアです。

建物も中高層のオフィスビルとなっており、

建て替えには相応の資金が必要だったと考えられます。


成長を前提とした投資だった可能性

もちろん、

この設備投資自体を否定することはできません。

実際、

建て替えを行った時期には加盟店数が急速に増加していました。

例えば、

  • 2013年 14万店舗
  • 2018年 20万店舗

まで拡大しています。

経営陣から見れば、

「加盟店は今後も増え続ける」

という判断は、それほど不自然ではなかったでしょう。

営業部門も非常に大きく、

積極的な営業活動によって加盟店を増やしていたことがうかがえます。

つまり、

大型設備投資は、

将来の成長を見据えた投資

だった可能性があります。


しかし、その直後にコロナ禍が発生

ところが、

2020年、新型コロナウイルスの流行によって状況は一変します。

全東信の主要顧客と考えられる

  • 居酒屋
  • バー
  • スナック
  • クラブ

などの夜間飲食業態は、

外食産業の中でも特に大きな打撃を受けました。

加盟店数の減少やカード利用額の減少は、

全東信の手数料収入を大きく押し下げた可能性があります。


コロナ直後ではなく、数年後に倒産した理由

今回、私が最も興味深いと感じたのは、

倒産したタイミング

です。

もし原因がコロナだけであれば、

2020年や2021年に経営が行き詰まっても不思議ではありません。

しかし、実際には2026年まで事業を継続しています。

その間、

市場はある程度回復しました。

一方で、

公開データを見る限り、

夜間飲食市場はコロナ前の規模には戻らず、

縮小した状態で推移しています。

つまり、

売上は以前ほど戻らない一方で、

会社には、

  • 自社ビル
  • 営業組織
  • システム
  • 借入返済

などの固定費が残り続けた可能性があります。


増資から見える財務面の変化

さらに沿革を見ると、

資本金は短期間で大きく増加しています。

  • 2017年 9.7億円
  • 2018年 15億円
  • 2019年 20億円
  • 2021年 35億円
  • 2022年 45億円

この急速な増資は、

自己資本を厚くし、

財務基盤を強化することを目的としていた可能性があります。

立替払いを行うビジネスでは、

金融機関からの信用力が非常に重要になります。

そのため、

増資によって資本を厚くしながら、

事業継続を図っていたとも考えられます。


自社ビルは金融機関の担保だった可能性も

今回の倒産では、

複数の金融機関が数十億円規模の債権を公表しています。

一部の金融機関では、

貸出額よりも保全されていない金額が少ないことから、

担保や保証などによって一定額が保全されていることも分かっています。

公開情報だけでは担保の内容は分かりませんが、

大阪本社ビルや赤坂ビルなどの自社不動産が担保に設定されていた可能性も考えられます。

今後、破産手続きの中で財産目録や担保の状況が明らかになれば、より詳細な分析が可能になるでしょう。


私が考える「時間差で訪れた経営危機」

公開情報を総合すると、

今回の倒産は、

単純にコロナだけでは説明できないように感じます。

むしろ、

  • 成長を前提とした積極投資
  • 大規模な営業組織
  • 巨額の運転資金を必要とするビジネスモデル
  • コロナによる市場縮小
  • 市場回復の鈍化
  • 金利上昇や借入負担

これらが複合的に重なり、

時間をかけて財務体力を奪っていった可能性があります。

もちろん、現時点ではあくまで公開情報をもとにした考察であり、実際の倒産原因は破産管財人の調査によって明らかになるものです。

しかし、

「なぜコロナ直後ではなく2026年に倒産したのか」

という疑問に対しては、

設備投資や固定費という視点も重要ではないでしょうか。


まとめ

全東信の沿革を見ていくと、

単なる決済代行会社ではなく、

積極的な投資を行いながら成長してきた企業であったことが分かります。

一方で、

その成長を支えた

  • 自社ビル
  • 営業組織
  • システム投資

などは、

市場が縮小した局面では大きな固定費となる可能性があります。

企業分析では、

損益計算書だけではなく、

「会社がどのような成長戦略を描き、どのような投資を行ってきたのか」

という歴史を見ることも非常に重要だと改めて感じました。

今後、破産管財人による資料や財産目録が公表されれば、引き続き検証していきたいと思います。


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この投稿は投稿者によって CC BY 4.0 の下でライセンスされています。