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フードデリバリーのmenuが事業撤退。出前館の業績推移からみるフードデリバリー市場の難しさ

KDDI傘下のmenuが2026年9月にサービス終了を決定。フードデリバリー事業のビジネスモデルを分析します。出前館の長期的な業績推移や広告宣伝費、業務委託費、アクティブユーザー数などを分析し、menuやUber Eatsとの違いからフードデリバリー市場の収益構造と今後を考察します。

フードデリバリーのmenuが事業撤退。出前館の業績推移からみるフードデリバリー市場の難しさ

KDDI傘下のmenuが事業撤退を表明しました。

menuは2018年に設立され、コロナ禍で急拡大したフードデリバリー市場に参入。その後、KDDIとの資本業務提携などを通じて事業を拡大してきました。

しかし、黒字化を実現できないまま、2026年9月30日をもって「menu」のサービスを終了し、その後、menu株式会社も解散・清算される予定です。

KDDIは今回の判断について、フードデリバリー市場を取り巻く競争環境の変化や今後の事業見通しを総合的に検討した結果、経営資源の最適配分の観点からサービスを終了すると説明しています。

今回は、上場企業である出前館の業績推移を分析しつつ、menuやウーバーイーツとの違いを比較し、フードデリバリー市場について考察していきます。

なお、menuのサービス終了は2026年9月30日が予定されており、通常注文は同日20時まで、予約注文は9月23日20時まで受け付ける予定です。


menuは2018年設立の企業です。

設立当初はテイクアウトサービス事業を行っていて、飲食店向けの注文アプリを運営しており、当初は飲食店がそのまま配達するスタイルでした。

その後、2020年4月にフードデリバリーサービスを開始。

現在では、飲食店と配達員をマッチングする形のフードデリバリー事業が中心となっています。

コロナ禍によってフードデリバリー市場が急拡大する中で、全国へサービスを展開していきました。

2021年6月にはKDDIと資本業務提携を開始。KDDIはmenuの株式の一部を取得し、menuを持分法適用関連会社としました。

さらに2022年にはKDDIが追加出資し、2023年にはKDDIとのジョイントベンチャー(合弁事業)となっています。

KDDIとの提携では、au PAYアプリへのmenuの追加や、auスマートパスプレミアム会員向けの配達料無料特典など、KDDIの顧客基盤を活用したサービス拡大が進められました。

menuはコロナ禍で急速に加盟店を増やし、2022年8月には加盟店舗数が約9.1万店舗まで拡大しています。

menuのサービス開始から撤退までの主な流れを整理すると、以下のようになります。

時期 出来事
2018年10月 menu株式会社設立
2019年 テイクアウトサービス開始
2020年4月 フードデリバリーサービス開始
2020年~ コロナ禍によるデリバリー需要の急拡大
2021年6月 KDDIと資本業務提携
2022年 KDDIが追加出資
2023年 KDDIとのジョイントベンチャー(合弁事業)へ
2024年上期 デリバリーアプリ新規ダウンロード数で1位を獲得
2026年8月 サービス終了を発表
2026年9月30日 「menu」サービス終了予定
2026年9月30日以降 menu株式会社の解散・清算を予定

menuは、単純に「コロナ禍に一時的に利用されたサービス」だったわけではありません。

2024年上期には、データ.ai by Sensor Towerのデータをもとに、デリバリーアプリの新規ダウンロード数で初めて1位を獲得しています。

menu自身も、KDDIとの連携強化やテレビCM、キャンペーンなどのプロモーション強化が、新規ダウンロード数1位につながったと説明しています。

つまり、顧客獲得力が失われたから撤退した、という単純な話ではありません。

むしろ、一定の顧客獲得力を持ちながらも、事業として黒字化を実現できなかったことが、今回の撤退を考えるうえで重要なポイントになります。


menuの業績推移は以下の通りです。

なお、menu株式会社は上場企業ではないため、出前館のように毎四半期詳細な決算資料を公表しているわけではありません。

そのため、以下では公開されている決算公告等から確認できる数値を掲載しています。

決算期 当期純損益 純資産 総資産 負債
2020年8月期 ▲2.1億円 ▲2.1億円 2.6億円 4.8億円
2021年8月期 ▲28.6億円 +19.2億円 44.2億円 24.9億円
2022年1月期※ ▲26.3億円 ▲7.1億円 16.0億円 23.0億円
2025年1月期 ▲36.7億円 +1.1億円 20.2億円 19.1億円
2026年1月期 ▲38.0億円 ▲36.9億円 17.0億円 53.9億円

※2022年1月期は決算期を8月から1月へ変更したことによる約5か月間の変則決算です。そのため、通常の12か月決算と単純比較することはできません。

注目すべきなのは、確認できる決算期において、一度も当期純損益が黒字化していないことです。

特に2021年8月期以降は、毎年数十億円規模の赤字を計上しています。

2026年1月期には純損失が約38億円となり、純資産も約▲36.9億円まで減少しています。

また、利益剰余金は約▲99.9億円となっており、過去の赤字の累積額を示す利益剰余金ベースでは、累積赤字は100億円規模に達しています。

つまり、menuはコロナ禍で急成長したサービスであった一方、その成長過程で黒字化を実現できないまま、累積的な損失を抱えることになりました。


ここは今回のmenu撤退を考えるうえで、非常に重要なポイントです。

menuの加盟店舗数は、コロナ禍に急速に拡大しました。

時点 加盟店舗数
2021年4月 約5.3万店
2021年6月 約6万店
2022年8月 約9.1万店

2021年6月には、すでに47都道府県へのサービス展開と約6万店舗の加盟を実現していました。

その後、2022年8月には約9.1万店舗まで拡大しています。

さらに2024年上期には、デリバリーアプリの新規ダウンロード数で第1位を獲得しました。

つまり、

加盟店を増やせなかった

ユーザーを獲得できなかった

撤退した

という構図ではありません。

むしろ、

加盟店・ユーザーを大規模に獲得することには成功したものの、それを十分な利益につなげられなかった

と見る方が、menuの業績を考えるには合っています。

これは、フードデリバリー事業の難しさを考えるうえで非常に重要なポイントです。


なぜこのタイミングで事業を撤退したのか

フードデリバリー市場はいったんの成熟期を迎えています。

国内フードデリバリー市場は、コロナ禍で急速に拡大しました。

市場規模は、

国内フードデリバリー市場規模
2019年 約4,183億円
2020年 約6,271億円
2021年 約7,878億円
2022年 約7,740億円
2023年 約8,603億円
2024年 約8,078億円
2025年 約8,240億円(見込み)

となっています。(サカーナ・ジャパン調べ)

つまり、2019年から2023年にかけて市場規模は約2倍に拡大しました。

一方、2023年をピークとして、その後は市場規模が横ばいに近い状態となっています。

したがって、

「フードデリバリー市場そのものが縮小している」

という状況ではありません。

むしろ、

コロナ禍のような急激な市場拡大が終わり、成熟化が進んでいる

と考えるのが適切でしょう。

市場全体が急拡大している時期には、複数の企業がユーザーや加盟店を増やしながら成長できます。

しかし、市場の成長率が鈍化すると、

新規ユーザーを獲得する

競合からユーザーを奪う

クーポンや広告で利用を促す

という競争が激しくなります。

つまり、市場が成熟するほど、各社にとって「シェア争い」の重要性が高まることになります。

実際、menuだけでなく、Woltも2026年3月4日に日本でのサービスを終了しています。

Woltも日本撤退にあたって、競争環境などを踏まえ、日本市場から撤退する判断を行いました。

menuについても、KDDIは競争環境の変化や今後の事業見通しを総合的に検討した結果、経営資源の最適配分の観点からサービス終了を決定しています。

こうした動きを見ると、フードデリバリー市場では現在、市場の拡大を追うフェーズから、各社が採算性を問われるフェーズへ移行していると考えられます。


競合他社との比較

さて、次に、フードデリバリー事業の主要プレイヤーであるウーバーイーツや出前館との比較を見ていきます。

menuの撤退を理解するためには、

「なぜmenuは撤退したのに、Uber Eatsは残っているのか?」

という視点が重要になります。


ウーバーイーツは黒字化を達成

業界トップのウーバーイーツは、Uber Eats Japanとして2023年、2024年の2年連続で黒字化を達成しています。

さらに、2025年11月のUber Japanの発表でも、日本事業について2年連続黒字化を達成したことが説明されています。

これは重要なポイントです。

なぜなら、

  • menu:黒字化できず撤退
  • 出前館:赤字継続
  • Uber Eats Japan:黒字化

という違いが生じているからです。

さらにUber Eatsでは、従来のレストランだけでなく、食品・小売領域にも事業を拡大しています。

2024年には、グロサリー・リテール事業の売上が前年比約2倍となりました。

Uber Eats Japanは2025年の事業戦略として、

  • Anything:食料品・日用品の品揃え拡大
  • Anywhere:全国・郊外へのサービス拡大
  • Affordability:価格競争力

という3つの柱を掲げています。

つまり、単に「料理を運ぶサービス」から、

食品・日用品など、生活に必要なものを届けるプラットフォーム

へと事業領域を広げています。

デリバリー事業は、広告費やクーポンなどによるユーザー獲得コストが大きくなりやすいビジネスモデルです。

そのため、せっかく獲得したユーザーに料理だけを届けるのではなく、食品や日用品など利用目的を増やすことで、1ユーザー当たりの利用頻度を高めることができます。

これは、

新規ユーザー獲得

一度利用してもらう

日用品など別の目的でも利用

利用頻度上昇

LTV上昇

という流れです。

つまり、Uber Eatsはユーザーを増やすだけではなく、既存ユーザー1人当たりの利用価値を高める戦略を取っていると考えられます。


出前館はコロナ以降、黒字化できていない

業界2位の出前館の業績推移を見てみます。

以下は出前館の8月期のPLから、今回の分析に必要な項目を抜粋したものです。

単位:億円

8月期 売上高 売上原価 売上総利益 販管費 営業利益 広告宣伝費 業務委託費 給与手当等
2016 41.5 15.0 26.5 20.8 5.7 4.5 1.7 3.1
2017 49.4 17.2 32.2 24.2 8.0 7.4 2.2 3.4
2018 54.3 20.2 34.1 25.7 8.4 7.4 2.2 3.6
2019 66.7 24.7 42.0 42.4 ▲0.4 15.5 2.9 9.3
2020 103.2 99.2 ▲26.9 39.1 5.9 33.3
2021 289.5 311.6 ▲191.6 149.0 32.4 75.6
2022 473.1 345.3 ▲364.4 185.3 34.4 65.6
2023 514.2 409.1 105.1 227.7 ▲122.6 96.6 62.3 24.0
2024 504.1 388.0 116.1 176.0 ▲59.9 72.0 38.3 24.4
2025 397.2 286.3 111.0 94.9 ▲49.2 13.1 27.7 24.5

2023年8月期には売上高が514億円まで拡大しました。

しかし、営業利益は▲122.6億円。

2024年8月期には営業損失が▲59.9億円まで縮小し、2025年8月期には▲49.2億円まで改善しています。

それでも、コロナ禍以降、黒字化には至っていません。

一方で、出前館はコスト削減もかなり進めています。

広告宣伝費を見ると、

  • 2021年:約149億円
  • 2022年:約185億円
  • 2023年:約97億円
  • 2024年:約72億円
  • 2025年:約13億円

と大幅に減少しています。

つまり、

コロナ禍

大規模な広告・販促

ユーザー獲得

市場シェア拡大

という成長投資を行った後、

広告費削減

販管費削減

採算改善

へと戦略を切り替えてきたことが分かります。


出前館のユーザー数はどうなったのか?

この点を確認すると、出前館がなぜ難しい状況に置かれているのかがより分かります。

過去1年間に利用のあったアクティブユーザー数の推移を見てみます。

出前館のアクティブユーザー数は、コロナ禍で大きく拡大しました。

8月期 アクティブユーザー数
2021年 約734万人
2022年 約873万人
2023年 約657万人
2024年 約542万人
2025年 約455万人

つまり、2022年8月期には約873万人まで拡大したアクティブユーザーが、2025年8月期には約455万人まで減少しています。

約3年間でほぼ半分まで減少したことになります。

これは、出前館が2023年以降に広告宣伝費などの販管費を大きく削減してきたこととも無関係ではありません。

広告やクーポンなどを抑制すれば短期的にはコストを削減できますが、一方で新規顧客獲得や利用促進が弱くなり、ユーザー数や注文数が減少する可能性があります。

そこで出前館は、2026年8月期では、再びユーザー拡大に向けた投資へと舵を切っています。


大規模な資金調達を行ってきた出前館

ここで、menuと出前館の違いを考えるうえで重要なのが、資金調達です。

menuはKDDIとの資本業務提携を行い、その後、KDDIによる追加出資や合弁事業化などを通じて事業を継続してきました。

一方、出前館はコロナ禍に非常に大規模な資金調達を行っています。

特に2021年9月には、Zホールディングスをはじめとする第三者割当増資によって、約830億円の資金調達を完了しました。

このほか、2020年にも300億円規模の増資を行っていたのも含めると、コロナ前後に出前館が調達した資金は1,000億円以上で非常に大きな規模になります。

こうした資金をもとに、

  • 配達員への報酬
  • クーポン
  • 広告宣伝
  • サービス改善
  • ユーザー獲得

などへ大規模な投資を行いました。

それでも黒字化には至っていません。

つまり、フードデリバリー事業では、

「資金があるかどうか」

だけではなく、

「資金を投入して獲得したユーザーを、どれだけ利益につなげられるか」

が重要になります。


出前館を待ち受ける「累積赤字」と「黒字化」の壁

出前館は現在、非常に大きな岐路に立たされています。

というのも、2025年8月期に黒字化を目指していたものの、ユーザー数の減少が止まらず、結果として赤字を継続することになりました。

コロナ禍以降の出前館の当期純損失を合計すると、累積の赤字は約800億円となり、非常に大きなキャッシュを必要としていました。

一方のmenuは累積の赤字が130億円程度。

出前館が強大な資本をもとに、フードデリバリー事業のシェア拡大に向けていかに先行投資を行ってきたかがこの赤字からも垣間見えます。

先行投資が大きいということは、KDDIのように事業撤退という判断には至りにくい面があります。

また、黒字化への道のりも決して近くはありません。

出前館の四半期ごとの決算を見ると、販管費はおおむね20億円程度で安定しています。

一方で、売上から配達員へ支払う運賃等を差し引いた売上総利益は、忘年会・クリスマス・年末などの需要が大きい12月が含まれる四半期ベースでも5%程度しかありません。

これを加味すると、黒字化を達成するには、四半期ベースで400億円程度の売上が必要な計算になります。

対して、現在の出前館の四半期ベースの売上は100億円に届かない程度

ざっくりとした試算ではありますが、トップシェアでないと採算が取れないような非常に難しいビジネスモデルであることがうかがえます。


広告宣伝費を削減すれば黒字化できるのか?

では、

「広告宣伝費を減らせばいいのでは?」

という疑問が生じます。

実際、出前館は広告宣伝費を大幅に削減しています。

8月期 広告宣伝費
2021年 約149億円
2022年 約185億円
2023年 約97億円
2024年 約72億円
2025年 約13億円

2024年8月期については、営業損失が約59.9億円だった一方、広告宣伝費は約72億円でした。

そのため、アクティブユーザー数が多かった時期なら、単純計算では広告宣伝費をすべて削減すれば、営業利益はギリギリ黒字になる計算です。

しかし、これは現実的な黒字化策ではありません。

なぜなら、

広告宣伝費を削減

新規ユーザー獲得が減少

注文数が減少

売上総利益が減少

という影響が発生する可能性があるためです。

つまり、広告宣伝費は単純な「無駄な費用」ではありません。

ユーザーを獲得するための投資でもあるからです。

出前館が広告宣伝費を約13億円まで減らした結果、アクティブユーザー数は455万人まで減少しました。

そのため、広告費削減によって一時的に損失を小さくすることはできても、長期的な収益性を改善するには、

広告費を使って獲得したユーザーが、その後も継続的に注文してくれる状態

を作る必要があります。


出前館は2026年8月期から再び投資フェーズへ

こうした状況を受けて、出前館は2026年8月期から再び事業拡大に向けた投資を進めています。

出前館は、

  • フード・ノンフード領域の加盟店拡大
  • 配達時間の精度向上
  • サービス品質向上
  • ユーザー体験の改善
  • マーケティング投資

などを進めています。

一方で、2026年8月期第3四半期決算では、通期業績予想を下方修正しています。

2026年8月期 当初予想 修正予想
売上高 約400億円 392億円
営業損失 ▲72億円 ▲79億円

つまり、

ユーザーを再び増やすための投資を行う

ユーザー・注文数は回復

しかし収益性が改善せず

通期赤字予想をさらに拡大

という状況になっています。

これは、出前館が抱えている問題が単なる「ユーザー不足」ではないことを示唆しています。


一応ユーザーは戻り始めている

ここは、今回の出前館の決算を見るうえで非常に興味深いところです。

2025年8月期までアクティブユーザーは減少を続けました。

ところが、2026年8月期第3四半期では、

指標 2026年8月期第3四半期 前年同期比
オーダー数 1,659万件 108%
アクティブユーザー数 283万人 102%
GMV 427億円 103%

となっています。

つまり、

  • ユーザー数は増加
  • 注文数は増加
  • GMV(流通取引総額)も増加

しています。

一見すると、事業が回復しているように見えます。

しかし、3四半期累計では、

  • 売上高:282.9億円
  • 営業損失:▲63.7億円

となっています。

つまり、

再度ユーザー獲得に舵を切ったフェース

ということです。

これはフードデリバリー事業の難しさを象徴しています。

単純に、

「ユーザー数を増やせば黒字になる」

とは限らないからです。


出前館はどうしていくべきか

ここからは、出前館がmenuのように事業停止とならないようにするには、どういう選択肢があるのかを考察します。

① ヘビーユーザーのLTV拡大

フードデリバリー事業は、広告宣伝や初回クーポンといった集客のための初期コストが大きくかかるという意味では、サブスクリプションサービスと似たようなビジネスモデルとなっています。

この点、クーポンを加味した利益率の改善には、クーポンなしのサービス利用拡大が必要です。

サブスクリプション型のビジネスモデルでは、初回クーポンによる低価格でのサービス利用しか行わない、不採算顧客の存在を許容し、ヘビーユーザーによるLTVで採算をとっていきます。

この点、ウーバーイーツでは飲食店以外の商品配達も行うことで、ユーザー一人当たりの利用額を増やし、このLTVの拡大を図っています。

もちろん、取扱領域を拡大する際には、相応のコストが発生するため、ウーバーイーツのやり方をそのまま追随することは難しいですが、

  • ユーザーの利用回数を増やす
  • 日常的な利用を促す
  • 価格帯の高い飲食店の利用を促す
  • 食品・日用品など取扱商品の領域を拡大する

といった施策が必要です。


② 「ユーザー数」だけではなく「1注文当たりの採算」を改善する

今回の出前館の決算を見て、もう一つ重要なのが、

ユーザー数の拡大だけをKPIにしてはいけない

ということです。

2026年8月期第3四半期では、アクティブユーザー数が前年同期比102%、オーダー数が108%まで回復しています。

それにもかかわらず、営業損失は63.7億円です。

つまり、

ユーザーを増やす

注文を増やす

売上を増やす

だけでは、必ずしも利益につながりません。

重要なのは、

1注文当たりにどれだけ粗利が残るのか

です。

例えば、

注文金額

店舗からの手数料等

配達員への報酬

クーポン・販売促進

その他の変動的なコスト

1注文当たりの利益

という構造を改善する必要があります。

ユーザー数を増やすことと同時に、注文1件当たりの採算を改善することが重要になります。

出前館ではすでにダイナミックプライシングを導入しているほか、

ウーバーイーツでも複数注文を1回の配達で処理するといった対応を行っており、

こうした採算の改善が今後も必要になります。


③ 「料理を運ぶサービス」から「生活インフラ」へ

Uber Eatsが進めている、

  • 食品
  • 日用品
  • 医薬品
  • 小売商品

などへの事業拡大は、単なる売上拡大策ではありません。

ユーザーの利用目的を増やすことによって、

週1回のフードデリバリー

を、

「必要なときにUber Eatsを使う」

というサービスへ変えていく戦略とも考えられます。

利用頻度が高くなれば、広告によって毎回新規顧客を獲得する必要性が低下します。

つまり、

新規顧客獲得コストを抑える

既存顧客の利用頻度を高める

ことで、LTVを改善できます。

これは出前館にとっても重要な戦略になるでしょう。


まとめ:menuの撤退が示すフードデリバリー市場の難しさ

今回、menuの撤退について調べてみて分かったのは、

「フードデリバリー市場そのものがダメになった」わけではない

ということです。

国内市場はコロナ前の約4,200億円から2023年には約8,600億円まで拡大しました。

市場規模はその後一服していますが、2025年には再び増加が見込まれており、市場そのものが消滅するわけではありません。

しかし、コロナ禍のような急激な市場拡大が終わったことで、各社は「市場の成長」ではなく「競合とのシェア争い」の中で成長しなければならなくなりました。

menuは、

  • 約9.1万店舗まで加盟店を拡大
  • KDDIとの資本業務提携
  • au経済圏との連携
  • 2024年上期の新規ダウンロード数1位

など、決して小さくない事業基盤を構築しました。

それでも黒字化を実現できず、2026年9月のサービス終了と会社の解散・清算に至りました。

一方、出前館も、

  • コロナ禍に大規模な資金調達
  • アクティブユーザー873万人まで拡大
  • 大規模な広告宣伝
  • 加盟店・注文数の拡大

を実現しました。

それでも2025年8月期まで黒字化できず、2026年8月期も赤字が続く見通しです。

さらに2026年8月期第3四半期では、アクティブユーザーや注文数が回復しているにもかかわらず、売上総利益率は9か月累計で約0.5%にとどまり、第3四半期単独では売上総利益がマイナスとなりました。

この数字を見ると、フードデリバリー事業における本当の難しさは、

「ユーザーを集めること」

だけではないことが分かります。

ユーザーを獲得し、

注文を増やす

配達員を確保する

配達を成立させる

クーポンなどで利用を促す

その結果として十分な利益を残す

ところまで実現しなければなりません。

そして市場が成熟すればするほど、競合各社がユーザー獲得のために広告やクーポンを投入するため、この競争はさらに厳しくなります。

その中でUber Eats Japanは、2023年・2024年に2年連続で黒字化し、その後も食品・日用品などへ取扱領域を拡大しています。

ここに、menuや出前館との大きな違いがあります。

単純に「フードデリバリーの利用者を増やす」のではなく、

1人のユーザーに、どれだけ多く・長く使ってもらえるか

という方向にビジネスモデルを進化させているのです。

フードデリバリー市場は、コロナ禍の「成長市場」から、現在では「採算性が問われる成熟市場」へ移行しつつあります。

menuの撤退は、その変化を象徴する出来事だったのではないでしょうか。

この投稿は投稿者によって CC BY 4.0 の下でライセンスされています。