Abalanceはなぜ上場廃止になったのか?~リアルコムから再エネ企業へ、粉飾決算・インサイダー取引・ガバナンス問題の全貌~
Abalance(エーバランス)はなぜ上場廃止に至ったのか。リアルコム時代からWWBを中心とした再生可能エネルギー企業への転換、TOYO・VSUNを含む海外事業の拡大、元執行役員によるインサイダー取引、WWBの有償支給取引を巡る粉飾決算、第三者委員会の調査、特別注意銘柄指定、そして2026年9月の上場廃止決定までを時系列で解説します。
2026年8月25日、東京証券取引所はAbalance株式会社(証券コード3856)の上場廃止を決定しました。
整理銘柄への指定期間は2026年8月25日から9月25日まで。
そして、予定されている上場廃止日は2026年9月26日です。
今回の上場廃止理由は、単純に「粉飾決算が発覚したから」というものではありません。
東証が問題視したのは、粉飾決算などをきっかけとして明らかになったグループガバナンスや関連当事者取引管理などの問題について、Abalanceが改善計画を策定したものの、
「内部管理体制等が適切に整備される、または適切に運用される見込みがなくなった」
と東証が判断したことです。
では、Abalanceでは一体何が起きていたのでしょうか。
本記事では、Abalanceの前身であるリアルコム時代から現在までの会社の変遷を振り返りながら、
- なぜIT企業だったリアルコムが再生可能エネルギー企業になったのか
- WWBとはどのような会社だったのか
- 上場会社とWWBの関係はどのように変化したのか
- 元執行役員によるインサイダー取引では何が起きたのか
- WWBの「有償支給取引」とは何だったのか
- なぜ第三者委員会は「単なる会計ミス」ではなく「意図的かつ組織的な粉飾」と評価したのか
- なぜ特別注意銘柄に指定されたのか
- そして、なぜ最終的に上場廃止に至ったのか
を一つずつ整理します。
1.そもそもAbalanceはどんな会社だったのか?
現在のAbalanceを知るうえで、まず確認しておきたいのが「もともとは太陽光発電会社ではなかった」という事実です。
Abalanceの前身は、2000年に設立された「株式会社リアルコミュニケーションズ」です。
2001年に「リアルコム株式会社」へ社名変更し、2007年9月には東京証券取引所マザーズ市場へ上場しました。
つまり、もともとはソフトウェア開発などを手掛けるIT企業でした。
ところが、その後の会社の姿は大きく変わっていきます。
大きな転換点となったのが2011年です。
2.2011年、リアルコムがWWBを完全子会社化
2011年11月、リアルコムは株式交換によってWWB株式会社を完全子会社化しました。
ここで重要なのが、単なる子会社化ではありません。
WWBの代表取締役だった龍潤生氏が、リアルコムの代表取締役にも就任しています。
つまり、
リアルコム │ └── WWB │ └── 太陽光発電などの事業
WWB代表 龍潤生氏 ↓ リアルコム代表取締役
という形になりました。
この時点から、上場会社であるリアルコムの中に、WWBを中心とした新しい事業の流れが入り込んでいきます。
その後、リアルコムはIT事業中心の会社から、再生可能エネルギーを主要事業とする企業へ大きく変貌していきました。
3.リアルコムからAbalanceへ
2017年3月、リアルコムは社名を「Abalance株式会社」へ変更しました。
同じ時期、WWBは太陽光発電事業を拡大し、バローズなどを傘下に入れていきます。
さらに2019年には、それまでのIT事業をAbit株式会社へ承継。
つまり、
2000年代
IT・ソフトウェア企業
↓
2011年
WWBを完全子会社化
↓
太陽光発電事業へ進出
↓
2017年
Abalanceへ社名変更
↓
2019年
IT事業を分離
↓
再生可能エネルギー企業へ
という大きな事業転換が起こりました。
現在から見ると「Abalance=再生可能エネルギー企業」という印象がありますが、その出発点はIT企業だったわけです。
4.「上場会社の中身が変わった」という問題
ここで一つ興味深い論点があります。
リアルコムは2007年にIT企業として上場しました。
しかし、その後WWBを取り込み、太陽光発電事業を急速に拡大し、最終的にはIT事業そのものを切り離しました。
つまり、
上場時のリアルコムと、現在のAbalanceでは、事業内容が大きく異なっています。
このため、Abalanceの歴史を調べる際には、
「リアルコムというIT企業が太陽光発電会社へ転換した」
という視点だけでなく、
「上場会社の器を維持したまま、その中核事業と経営の中心がWWBを起点とする再生可能エネルギー事業へ移っていった」
という視点も重要になります。
実際、Abalance自身も2019年時点の資料で、2000年のソフトウェア開発企業としての創業から、再生可能エネルギー事業への拡大という成長の歴史を説明しています。
5.さらに海外の太陽光パネル製造事業へ
Abalanceの事業拡大は、国内の太陽光発電所だけではありませんでした。
大きな転換点となったのが、ベトナムの太陽光パネルメーカー「VSUN」です。
2020年12月、AbalanceはVSUNを連結子会社化しました。
これによって、
国内
WWB
↓
太陽光発電所・再エネ事業
海外
VSUN
↓
太陽光パネル製造
という構造が形成されました。
さらにVSUNを中心に、ベトナムでの太陽光パネル・セル製造工場などへの投資が進みます。
そして2023年にはTOYOという事業会社が設立され、2024年7月にはTOYOが米国NASDAQ市場へ上場しました。
Abalanceグループは、単なる「日本国内の太陽光発電会社」ではなく、
太陽光パネル・セルの製造から、発電所開発、海外展開までを手掛ける再生可能エネルギーグループ
へと変化していきました。
6.しかし、その成長の裏側でインサイダー取引事件が起きていた
Abalanceの歴史を振り返る際、粉飾決算だけに注目してはいけません。
2023年には、元執行役員によるインサイダー取引事件が発生しています。
問題となったのは、Abalanceの元執行役員です。
当時、この人物はIR広報室長兼経営企画室長という立場にありました。
2023年1月中旬ごろ、職務上、太陽光パネル関連事業を行う子会社が固定資産を取得するという未公表の重要事実を知りました。
その後、情報が公表される前にAbalance株を購入。
購入株数は1万9,400株。
購入金額は約5,316万円でした。
平均買付価格は2,740円。
その後、平均5,312円で売却しています。
最終的に、約4,991万円の売却利益を得たと認定されています。
7.「普通の社員のインサイダー」ではなかった
この事件が重く受け止められた理由の一つが、取引を行った人物の役職です。
単なる一般社員ではありません。
IR広報室長兼経営企画室長を務めていた執行役員です。
つまり、
会社の重要情報を扱う立場 ↓ 未公表の重要事実を知る ↓ 公表前に自社株を購入 ↓ 情報公表後に株価上昇 ↓ 売却して利益を得る
という構図でした。
2024年には証券取引等監視委員会が告発。
そして2025年3月17日、東京地方裁判所は有罪判決を言い渡しました。
判決は、
- 懲役2年6月
- 執行猶予4年
- 罰金250万円
- 追徴金1億307万円
です。
なお、この事件について、Abalanceが会社ぐるみでインサイダー取引を行ったと認定されたわけではありません。
また、このインサイダー取引事件と、後述する粉飾決算が直接結び付いていると認定されたわけでもありません。
しかし、
上場会社のIR・経営企画を担当する執行役員自身が、自社の重要情報を利用したインサイダー取引で有罪となった
という事実は、Abalanceのコーポレートガバナンスを考えるうえで無視できない出来事です。
8.そして問題の「有償支給取引」
Abalanceの上場廃止問題を語るうえで、最大のポイントとなるのがWWBの「有償支給取引」です。
有償支給取引とは、簡単に言えば、
発注者が材料などを仕入先に有償で支給し、その材料を使って加工・製造してもらう取引
です。
この取引自体が違法というわけではありません。
問題だったのは、
その取引の経済的実態と、会計上の売上計上が一致していなかったこと
でした。
9.何が問題だったのか?
例えば、非常に単純化すると、
WWB ↓ 100万円の部材を販売 ↓ 建設業者 ↓ その部材を加工・工事に使用
という取引であれば、一見するとWWBに売上が発生しているように見えます。
しかし、実際には同じ太陽光発電所に関連して、
WWB → 建設業者
100万円支払い
建設業者 → WWB
100万円支払い
というように、同日・同額の資金移動が行われていたケースが確認されました。
つまり、
WWB側にも建設業者側にも実質的な資金負担がほとんど生じていない
にもかかわらず、形式上は「売上」が成立する構造になっていたのです。
10.これは「資金循環」と呼べるのか?
ここは少し慎重に表現する必要があります。
一般的に「循環取引」という言葉からは、
A ↓ B ↓ C ↓ A
のように3社以上の取引先を商品・サービスと資金が循環する構造をイメージすることがあります。
今回のケースでは、必ずしもそのような多社間の円環構造ではありません。
一方、
WWB ↓ 建設業者 ↓ WWB
という形で資金が行って戻ってくる取引が存在していたため、
ランドトリップ型、あるいはラウンドトリップ型の取引
と表現すると、取引の実態をより直接的に表現できます。
第三者委員会も、複数案件について同日・同額の請求書の相互発行や資金の入出金を確認しています。
11.なぜ「売上」ではなく「粉飾」になったのか?
ここが会計上の核心です。
WWBが太陽光発電所の建設に必要な部材を建設業者へ販売したとしても、その取引が実質的に資金循環によって売上を作るための形式に過ぎなければ、連結財務諸表上、その売上をそのまま利益として残すことはできません。
特に重要なのは、
2021年6月期までは、WWBが計上した有償支給取引について、連結決算時に修正仕訳を行っていた
という点です。
つまり、少なくとも過去には、
WWB単体
売上計上
↓
Abalance連結決算
↓
連結修正
↓
売上・利益を消去
という処理が行われていました。
ところが2022年6月期、2023年6月期になると、この連結修正が行われなくなりました。
結果、
WWB
有償支給取引
↓
売上・利益を計上
↓
連結修正されない
↓
Abalance連結決算
↓
売上・利益として残る
という状態になりました。
12.第三者委員会は「単なる会計ミス」と認定しなかった
この点が今回の事件で最も重要です。
2024年に問題が発覚した際、Abalance側ではこの問題を「誤謬」、つまり会計処理上の誤りとして扱いました。
しかし、その後設置された第三者委員会が詳細な調査を実施。
そして2025年12月17日に公表された調査報告書で、第三者委員会はこれを単なる会計ミスとは認めませんでした。
第三者委員会は、
「意図的かつ組織的に行われた不正な会計処理(粉飾)」
と評価しました。
ここは非常に重要です。
「会計基準を知らなかった」
「経理担当者が処理を間違えた」
という問題ではなかったということです。
13.なぜ第三者委員会は「意図的」と判断したのか?
第三者委員会の調査では、WWBの営業部門やAbalanceの経理部門が、
有償支給取引について連結上そのまま売上・利益として認識することに問題があることを認識していた
とされています。
さらに、過去には実際に連結修正を行っていたにもかかわらず、2022年・2023年にはその処理が行われなくなりました。
つまり、
会計処理を知らなかった
↓
ではない
以前は正しく消去していた
↓
その後、消去しなくなった
↓
利益が連結財務諸表に残った
という変化があったわけです。
そのため第三者委員会は、単純な知識不足によるミスとは評価しませんでした。
14.さらに問題だった「同日・同額」の資金移動
第三者委員会の調査で確認された取引には、
同日・同額の請求書の相互発行や資金の入出金
が多数存在していました。
これによって、
WWB
↓ 100万円
建設業者
↓ 100万円
WWB
という資金の往復が生じます。
そのため、第三者委員会は、
実質的な資金負担を伴わないにもかかわらず、外形上のみ売上が成立する構造
だったと評価しています。
これは今回の不正会計を理解するうえで、非常に重要なポイントです。
15.さらに「案件名」を分かりにくくしていた
第三者委員会の調査では、案件管理の方法にも問題が見つかりました。
本来であれば、
「○○太陽光発電所」
など、実際の発電所案件と部材販売を明確に紐付けることができます。
しかし、一部では都道府県名や市町村名など、曖昧な案件名が使用されていました。
これによって、
部材販売と太陽光発電所案件との関係が分かりにくくなる
という問題が生じていました。
第三者委員会は、案件名を変更することで部材販売と案件との紐付けを分かりにくくすることを企図した可能性についても検討しています。
つまり、問題は単なる「仕訳の間違い」だけではありません。
取引そのものを追跡しにくくするような内部管理上の問題も存在していた
のです。
16.利益への影響はどのくらいだったのか?
第三者委員会が試算した数字を見ると、この問題の大きさがよく分かります。
特に2023年6月期が重要です。
WWBの2023年6月期について、
売上高
63.45億円
↓
有償支給取引等を適切に修正すると
42.14億円
となります。
つまり、
約21.30億円の売上が過大計上されていた
ことになります。
さらに、
営業利益
9.95億円
↓
2.11億円
となります。
つまり、
営業利益は約7.60億円減少
します。
表面的には約10億円の営業利益を計上していたものが、実態に合わせて修正すると約2億円。
実に、
約76%の減少
です。
これは「少し会計処理を間違えた」という規模ではありません。
17.では、なぜこんなことをしたのか?
第三者委員会が指摘した背景には、
- 資金繰りへのプレッシャー
- 予算達成へのプレッシャー
- ガバナンスの欠如
- コンプライアンス意識の低下
などがありました。
つまり、
売上・利益を作らなければならないという経営上のプレッシャー
が背景にあったとされています。
ここで重要なのは、
「利益を水増しするために架空の商品を作った」
という単純な架空取引ではなく、
実際に太陽光発電所の建設案件が存在する中で、その周辺の有償支給取引を利用して売上・利益を作っていた
という点です。
そのため、取引の外形だけを見ると「実際に商品が動いている」ように見えます。
しかし、
資金の動きと取引の経済的実態を追うと、売上を作るための取引だったことが浮かび上がる
という構造でした。
18.さらに問題だったのが「粉飾発覚後」の対応
今回の事件をさらに深刻にしたのが、2024年に問題が発覚した後の会社側の対応です。
第三者委員会の調査では、社内メールなどから、
対外的には「経理部の知識不足」と説明する方向
を示す内容が確認されています。
さらに、
「本来は粉飾なのですが」
という趣旨の社内でのやり取りも確認されています。
つまり、第三者委員会の報告書を読むと、
「本当に単なる会計ミスだったのか?」
という疑問が強く浮かび上がります。
19.第三者委員会を避けようとした動き
さらに重大なのが、第三者委員会の設置そのものを避けようとする動きです。
第三者委員会の調査では、
第三者委員会が設置されると刑事事件や上場廃止につながる可能性がある
という趣旨の社内認識が確認されています。
また、
「第三者委員会を入れられたりの最悪の事態は是非、免れたい」
という趣旨のメールも確認されています。
これは、
「問題を徹底的に外部調査してもらおう」
という企業姿勢とは正反対です。
第三者委員会は、このような事情も踏まえて、経営陣が不正会計の問題が重大な結果につながる可能性を認識していたと評価しています。
20.問題は「経理部」だけではなかった
ここまでを見ると、
「経理担当者が悪かったのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、第三者委員会が最終的に問題視したのは、もっと大きな組織構造でした。
報告書では、経営トップに権限が集中していた状況が指摘されています。
関係者からは、
「Abalanceは龍さんが作った」
「この会社は龍商店である」
といった趣旨の発言も確認されています。
また、トップと異なる意見を述べることへの萎縮や、人事評価などへの懸念も指摘されています。
その結果、
経営トップに権限が集中
↓
トップに異論を言いにくい
↓
問題を指摘しにくい
↓
内部牽制が機能しない
↓
不適切な取引が継続
↓
発覚後も問題を小さく見せようとする
という企業風土が形成されたと第三者委員会は評価しました。
21.そしてAbalanceは「特別注意銘柄」へ
こうした問題を受け、Abalanceは2026年1月31日付で東京証券取引所から特別注意銘柄に指定されました。
特別注意銘柄とは、上場会社の内部管理体制等に重大な問題があり、改善が必要な場合に指定されるものです。
つまり、この段階で東証が問題視していたのは、
「過去に粉飾があったかどうか」
だけではありません。
むしろ、
「この会社は、今後きちんとした内部管理体制を構築できるのか?」
という点が問われることになります。
22.Abalanceは改善計画を策定
Abalanceはその後、改善計画の策定を進めました。
特に重要だったのが、
元代表取締役会長兼CEOに事実上集中していた権限からの脱却
です。
また、
国内部門と海外部門を切り離すための会社分割など
も検討されました。
これは、グループ売上の大半を占める海外事業の経営情報などが、親会社側に適切に共有されないという問題を解消するためです。
23.ところが、ここで大きな問題が発生
Abalanceは2026年7月31日に改善計画を開示しました。
しかし、その内容を東証が審査した結果、
「本当に内部管理体制が改善されるのか?」
という点で重大な疑義が残りました。
特に東証が問題視したのが、
元代表取締役会長兼CEOに事実上権限が集中した体制からの脱却
についてです。
Abalanceは、会社分割などによって国内部門と海外部門を切り離す措置について検討したものの、実施困難との結論に至りました。
さらに、元代表取締役会長兼CEOは取締役として残り、海外子会社の経営に関する情報を組織として管理することで対応する方針を示しました。
24.東証が「改善する見込みがない」と判断
ここで東証の判断が決定的になります。
東証は、Abalanceの改善計画について、
「内部管理体制等が適切に整備される、または適切に運用される見込みがなくなった」
と判断しました。
その理由として、主に次の点が挙げられています。
① 元トップへの忖度・萎縮という問題が残っている
グループガバナンスや関連当事者取引管理の問題の背景にある、
元トップへの忖度や萎縮
という企業文化を十分に解消できていないと判断されました。
② 海外子会社からの重要情報の共有が依然として不十分
特別注意銘柄指定後も、海外子会社における重要情報の収集を元トップに任せ続けた結果、
親会社への情報連携が遅れ、適時開示の遅延が発生
していました。
③ 有償支給取引の内部統制にも問題が残っていた
2026年3月期の監査報告書では、
グループ全体で有償支給取引に関する内部統制が構築されておらず、Abalanceが取引を網羅的に把握できていない
ことなどが指摘されています。
つまり、
粉飾の原因となった問題が、完全には解消されていなかった
わけです。
25.そして2026年8月25日、上場廃止決定
そして2026年8月25日。
東京証券取引所はAbalance株について、
上場廃止を決定し、整理銘柄に指定しました。
整理銘柄指定期間は、
2026年8月25日~9月25日
です。
そして、
2026年9月26日
に上場廃止となる予定です。
26.今回の上場廃止は「粉飾決算だけ」が原因ではない
ここは非常に重要です。
Abalanceの上場廃止を、
「粉飾決算をしたから上場廃止になった」
と理解すると、本質を見誤ります。
今回、東証が直接的に問題視したのは、
粉飾などをきっかけとして明らかになった内部管理体制・グループガバナンスの問題を、会社が十分に改善できなかったこと
です。
つまり、
過去の不正会計 ↓ 第三者委員会調査 ↓ ガバナンス上の問題が判明 ↓ 特別注意銘柄 ↓ 改善計画 ↓ しかし東証が 「改善する見込みがない」 と判断 ↓ 上場廃止
という流れです。
27.Abalanceで起きた問題を時系列で整理すると
ここまでの内容を時系列にまとめると、次のようになります。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 2000年 | リアルコミュニケーションズ設立 |
| 2001年 | リアルコムへ社名変更 |
| 2007年 | 東証マザーズへ上場 |
| 2011年 | WWBを完全子会社化 |
| 2011年 | WWB代表の龍潤生氏がリアルコム代表取締役に就任 |
| 2017年 | リアルコムからAbalanceへ社名変更 |
| 2019年 | IT事業をAbitへ承継 |
| 2020年 | VSUNを連結子会社化 |
| 2022年 | 有償支給取引による不適切な会計処理が発生 |
| 2023年 | 有償支給取引による不正会計が継続 |
| 2023年 | 元執行役員によるインサイダー取引 |
| 2024年 | インサイダー取引事件が表面化 |
| 2024年 | 有償支給取引の会計処理問題が発覚 |
| 2024年 | 会社側は「誤謬」として処理 |
| 2025年 | 東京地裁が元執行役員に有罪判決 |
| 2025年12月 | 第三者委員会が調査報告書を公表 |
| 2025年12月 | 有償支給取引を「意図的かつ組織的な不正会計」と評価 |
| 2026年1月 | Abalanceが特別注意銘柄に指定 |
| 2026年 | 改善計画を策定 |
| 2026年7月 | 改善計画を公表 |
| 2026年8月25日 | 東証が上場廃止を決定 |
| 2026年9月26日 | 上場廃止予定 |
28.なぜ「ここまで大きな問題」になったのか?
Abalanceの一連の問題を振り返ると、単独の事件が一つ起きたわけではありません。
むしろ複数の問題が連続しています。
【会社の変遷】
IT企業 ↓ WWBを取り込み ↓ 再生可能エネルギー企業へ ↓ 太陽光発電 ↓ 太陽光パネル製造 ↓ 海外事業拡大 ↓ TOYOのNASDAQ上場
【その裏側】
経営トップへの権限集中 ↓ 内部牽制の弱さ ↓ インサイダー取引事件 ↓ 有償支給取引による不正会計 ↓ 「誤謬」として処理 ↓ 第三者委員会による再調査 ↓ 「意図的かつ組織的な粉飾」と認定 ↓ 特別注意銘柄 ↓ 改善計画 ↓ 改善見込みなし ↓ 上場廃止
こうして見ると、今回の上場廃止は単発の不祥事によるものではなく、
長期間にわたって積み重なったガバナンス上の問題が、最終的に上場維持が困難な水準にまで達した結果
と捉えることができます。
29.一番興味深いのは「事業が本当に悪かったのか?」という点
ここまでの話を読むと、
「そんな問題のある会社なら、事業そのものも駄目だったのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、必ずしもそうとは限りません。
Abalanceは太陽光発電事業だけでなく、太陽光パネル・セル製造事業にも進出し、VSUNやTOYOなど海外事業を大きく成長させました。
特にTOYOはNASDAQに上場するまで成長しています。
つまり、
「事業そのものの成長」と「上場会社としてのガバナンス」が別々に存在していた
可能性があります。
これは今回のAbalance問題を考えるうえで非常に重要なポイントです。
企業は、
事業が成長しているからといって、上場会社として健全とは限りません。
逆に、
ガバナンスに問題があるからといって、すべての事業が実態のないものとは限りません。
Abalanceは、その両面を考える必要がある企業だったと言えるでしょう。
30.まとめ:Abalanceの上場廃止から学べること
Abalanceの一連の問題を一言でまとめるなら、
「事業拡大に対して、上場会社として必要なガバナンス体制の構築が追いつかなかった」
ということではないでしょうか。
リアルコム時代にはIT企業だった会社が、WWBを取り込み、太陽光発電事業へ進出。
その後、VSUNなどを通じて太陽光パネル製造へ進み、さらに海外事業を拡大。
TOYOのNASDAQ上場にまで至りました。
一方で、その成長過程では、
- 経営トップへの権限集中
- 内部牽制機能の不足
- インサイダー取引事件
- 有償支給取引を利用した不正会計
- 粉飾発覚後の不適切な対応
- 関連当事者取引管理の問題
- 海外子会社からの情報連携の問題
など、複数のガバナンス上の問題が明らかになりました。
そして最終的には、
「問題が発生したこと」そのものではなく、「問題を改善できる組織に変わる見込みがない」と東証から判断されたこと
によって、上場廃止が決定されました。
2026年9月26日。
2007年にマザーズへ上場したリアルコムから始まった約19年の上場企業としての歴史は、ここで一つの区切りを迎えることになります。
Abalanceの事例は、
「成長企業にとって、事業規模の拡大と同じくらい、内部管理体制を成長させることが重要である」
ということを考えさせられる事例と言えるでしょう。