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円安だから利上げすべき?日銀が為替を政策ターゲットにしない理由【日銀わかりやすく解説③】

円安が進むと『日銀はもっと利上げすべき』という声が高まります。しかし、日本銀行の政策目標は為替ではなく物価です。なぜ日銀は為替をターゲットにしないのか、その理由をわかりやすく解説します。

円安だから利上げすべき?日銀が為替を政策ターゲットにしない理由【日銀わかりやすく解説③】

この記事は連載記事になります。第一回の記事はこちら↓

前回の記事では、植田総裁が慎重な利上げを進める背景として、2000年のゼロ金利解除の経験を振り返りました。

では、現在よく耳にする

「円安なのだから、もっと利上げすべきではないか」

という意見について、日本銀行はどのように考えているのでしょうか。

「円安だから利上げを」という声はよく聞く

円安が進むと、

  • 輸入物価が上昇する
  • ガソリン価格が上がる
  • 食品価格が上がる

など、家計への負担が大きくなります。

そのため、

「円安を止めるために日銀はもっと利上げすべきだ」

という意見が出てくるのも自然なことかもしれません。

実際、金融政策決定会合後の記者会見でも、為替に関する質問が繰り返し行われています。

しかし、日銀のターゲットは為替ではない

ここで重要なのは、日本銀行は為替相場そのものを政策目標にしていないということです。

日銀が目標としているのは、

「物価の安定」

です。

具体的には、

消費者物価上昇率2%を安定的に実現すること

が金融政策の目標として掲げられています。

つまり、

  • 「1ドル何円なら利上げする」
  • 「円安だから自動的に利上げする」

という仕組みにはなっていません。

なぜ為替をターゲットにしないのか

もし日銀が為替を目標にしてしまうと、さまざまな問題が生じます。

例えば、アメリカがインフレ対策として利上げを行った場合、日本も円安を防ぐために同じように利上げをしなければならなくなります。

しかし、

  • 日本の景気が弱い
  • 賃金上昇が十分でない
  • 国内需要が弱い

という状況で無理に利上げを行えば、日本経済に大きな負担を与える可能性があります

本来、日本銀行が見るべきなのは、日本経済の実情です。

海外の金利動向に合わせて機械的に政策を決めることはできません。

最近では海外からの「利上げ圧力」も話題に

最近では、アメリカのトランプ大統領やベッセント財務長官が、

「円安是正のために日銀は利上げを進めるべきだ」

といった趣旨の発言を行い、話題になっています。

確かに、日米の金利差は為替相場に影響を与えるため、こうした意見が出てくるのも不思議ではありません。

アメリカのFRBも高すぎる物価上昇率を抑制するため、金融政策を利上げに転換したことで、ドル円は161円を超える展開となりました。

しかし、日本銀行の役割はアメリカの金融政策に歩調を合わせることではありません。

もし円相場だけを理由に利上げを行えば、日本経済の実情と合わない政策となり、景気に悪影響を与える可能性があります。

日本銀行が重視しているのは、

  • 賃金の動向
  • 企業収益
  • 消費の強さ
  • 基調的な物価上昇率

など、日本国内の経済情勢です。

そのため、海外から利上げを求める声があったとしても、最終的な判断は日本経済の状況を踏まえて行われます。

為替は「重要だがターゲットではない」

もちろん、日本銀行も為替を全く見ていないわけではありません。

円安が進めば、

  • 輸入物価の上昇
  • 企業収益への影響
  • 家計への負担

などを通じて、物価や景気に影響を与えます。

そのため、為替は金融政策を考えるうえで重要な要素の一つです。

しかし、

「為替そのもの」ではなく、「為替が物価や経済に与える影響」を見ている

という点が重要です。

たしかに、黒田総裁による異次元金融緩和後に円安が進みました。

ただし、円安だけを理由に利上げを判断することは、金融政策本来の目的とは異なる考え方ともいえます。

円安対策の主役は政府

では、円安に苦しむ人たちは誰に期待すればよいのでしょうか。

それは政府の役割が大きいといえます。

  • 生産性向上
  • 賃上げの促進
  • 国内投資の拡大
  • エネルギー政策

などを通じて、日本経済そのものを強くしていくことが重要になります。

経済が成長し、賃金と物価の好循環が定着すれば、結果として日銀も利上げを進めやすくなります。

その結果として、為替相場にも影響が及ぶことがあります。

アベノミクスにおいて、日銀の金融政策が国内の需要を促進し、経済活性化に寄与したことは事実ですが、あくまで政府主体のもと、金融政策が一端を担ったにすぎません。

金融政策と為替政策は別物

実は、

  • 金融政策 → 日本銀行
  • 為替政策 → 政府(財務省)

という役割分担になっています。

為替介入を実施する主体も日本銀行ではなく、政府(財務省)です。

日本銀行はその事務を代行しているにすぎません。

この役割分担を理解すると、ニュースでの発言や政策の意味も見えやすくなります。

おわりに

円安が進むと、

「もっと利上げすべきではないか」

という議論が盛り上がります。

しかし、日本銀行の本来の目標は「為替」ではなく「物価の安定」です。

円安は重要な要素ではあるものの、それ自体が政策目標ではありません。

次回は、今回の利上げを理解するうえで重要な金融政策

「オーバーシュート型コミットメント」

について整理してみたいと思います。

ニュースであまりフォーカスされないこの言葉ですが、実は日銀にとって重要な考え方なのです。

この投稿は投稿者によって CC BY 4.0 の下でライセンスされています。